日本人なら知っておきたい日本文学

日本人なら知っておきたい日本文学 ヤマトタケルから兼好まで、人物で読む古典

日本人なら知っておきたい日本文学 ヤマトタケルから兼好まで、人物で読む古典


人物で読む古典。読むのか、見るのか。どっちでもいいや、楽しいな。
とりあげられた人物は、清少納言紫式部藤原道長、阿部晴明、源頼光菅原孝標女鴨長明、兼好、ヤマトタケル
それから巻末にまとめて七つの古典から取り上げられた「こぼればなし」。


薄い本で、しかも漫画(+エッセイ?)で、これだけたくさんの人物(古典)をとりあげるわけだから、
一人ひとりに割くページ数はほんの数ページにとどまります。
そうたいしたことは書かれてはいないんじゃないかな、と思ったのですが、どうしてどうして。
逆に、これぞ漫画(コミック・エッセイ?)だからこそ、の本でした。
その人物の際立った特徴のほぼ一点(?)に焦点を当てて・・・突っ込みます。爆笑でした。
「わかるわかる」「いるいる、こういう人」「この人、現代だったら、芸能人のあのタイプ!」とか・・・
現代的な感覚でそのまま古典を眺めれば、ほんとに突っ込みどころ満載なのだ、と納得。


もしかしたら、その道の達人が見たら「いや、そういう見方は・・・」と思う箇所もあるかもしれません(ないかもしれません)
でも、こんな古典の読み方もありなんだ、と思えば、ちょっと敬遠していた私みたいなのにも、
古典の敷居がすごく低くなる。出会いの間口はこんなに広いんだ、と思うのも嬉しいです。
外国の人から見た日本の文化が、日本人から見たら「へえ、そう見えるのか」とか「いや、それは違うから」とびっくりな感じなのを思い出しながら、
外国人な感じで、現代人が遠い過去の文学を眺めます。
(ああ、古典の世界って、外国のように遠くて不思議の国なのでした)


印象的なところはすごくたくさんあるのですが、
たとえば、
出家前の兼好を「若い頃サラリーマンでした」といいます。
兼好も上司(?)も、現代風の事務所でパソコンを前にして仕事をしている。
スーツにネクタイ姿。頭には・・・烏帽子をかぶっているんだもの。
吹き出してしまった。


源頼光を「イケメン部下」を従えた「平安のモンスター・ハンター」と呼ぶ。
「イケメン部下四人」=「人呼んで頼光四天王」=「千年前のカラーレンジャー」
楽しすぎます。


なんでこんなにおもしろいのかっていったら、
作者二人、もともと古典がそれほど得意ではなかったと言っているおかげ、と思っています。
つまり、おなじく得意ではない読者と目線がいっしょ、と思えるのです。
あまり得意でない同士で、よくわからん古典を読みあって笑っている、そんな感じなのです。
(もちろん著者が、ずっとこのレベルではないのはわかっているんですけどそんな気持ちにさせてくれるんですよねえ)


さんざん笑わせてくれながら、ちゃんと過去の世界への入門書にもなっています。
この本を読んで、元ネタ 原典(懇切丁寧な注釈付き希望)を読んでみたいな、と思い始めているところです。