- 作者: ジェラルド・ダレル,池沢夏樹
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 1977/06
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「虫とけものと家族たち」(感想はこちら)で描き切れなかったダレル家の物語が、続けてこの本で描かれています。
コルフ島での五年間の家族の記録ですが、この五年間は、まるで人生からもらった輝かしい休暇のようです。
五年・・・
そんなにたくさんじゃないけれど、きっとだれもが、忘れられない素晴らしい時間を持っている。
それは二、三日の出来事であったり、ほんの一瞬であったり。
時間の多寡は関係ないと思う。
その一瞬、ふっと全てが満ち足りて、「ああ、今このときを絶対忘れないようにしよう」と思う。
そういう至福の時間を思い出して、そのときの感覚を、この本を読みながら思い出している。
>温かい空気とぶどう酒、それに憂愁に満ちた夜の風景がぼくに甘い悲しみをもたらした。これからもずっとこんな風に楽しいんだ、とぼくは考えた。
このあと、ダレル家の人々も戦争の渦中に生きることになったのだろう。
だけど、嘗て経験した輝きは消えるはずがない。
暗い日々に、そっと取り出して、その明るさを何度でも味わうことができる。
ジェレミーたちの素晴らしい日々に照らされて、自分の中に眠っている温かい光をゆり起している。
それが、このシリーズ(あと一冊ある!)を好きだと感じた理由です。
懐かしくて、少しせつない。そして、豊かで幸せな時間。