『チョコレートのおみやげ』 岡田淳;植田真

 

港の公園のベンチで、みこおばさんは、チョコレートの箱をひとつ取り出した。
綺麗な紙に包まれたチョコは包の色も形も違うから、味もきっとみんな違うのだろうな。
小学五年のゆきちゃんとみこおばさん、二人でひとつづつ、チョコレートを口に入れる。


異人館、風見鶏、門についたライオンのノッカー……
坂道、風船売り、チョコレート……
ゆきちゃんが、今日の日を振り返っていると、
「時間がとけていくみたい」みこおばさんはそう言って、即興のお話を始めた。
「坂の上の洋館に、ひとりの男とニワトリがくらしていました。」


みこおばさんが口に入れたチョコレートはどんな味だったのかな。
チョコレートが語らせるおはなしみたいだ、と思ったから。
もしかしたらちょっとビターだったのかもしれないけど、ゆきちゃんのチョコレートは……


大人のみこおばさんと子どものゆきちゃんと、二人で語りあって、おはなしが少しずつ変わっていくのが楽しい。


各ページに植田真さんの絵がたっぷりのこの本は、抑えた色合いがおしゃれで、そのままチョコレートの箱みたい。見返しはチョコレート色。
今度のバレンタインには、チョコをひとつ添えてこの本をプレゼントしようか。チョコの味は……ミルクがかかった甘めのがいいな。だけど、あと味がすっきりしたのが。