古い作品を多く読んだ月でした。
児童書では「二年間の休暇」「宝島」「みどりのゆび」、それから改訳の岩波少年文庫版「ツバメ号とアマゾン号
一般書では中勘助「鳥の物語」、ジュール・ルナール「博物誌」など。
いつか読みたい、と思っていた仁木悦子さんのミステリを二冊読めたこともよかったです。
強く印象に残っているのは高野文子「黄色い本」 宝物になりました。

暑さに負けて、本の内容がなかなか頭に入らない七月でした。来月も暑そうですね。暑さを吹き飛ばすような爽快な本をさがして乗り切りたいな。

7月の読書メーター
読んだ本の数:29冊
読んだページ数:7868ページ

みどりのゆび (岩波少年文庫)みどりのゆび (岩波少年文庫)
複雑で世知辛い人の世ですが、ぐんぐん伸びていく植物たちの明るい大きなエネルギーに、元気にならずにいられない。みどりのゆびの持ち主がひときわ無垢な子どもというのも納得。
読了日:07月30日 著者:モーリス ドリュオン
宝島 (福音館文庫)宝島 (福音館文庫)
(再読) こんなに古い作品なのに、このスピード感。大きな盛り上がりや見ぜ場が、次から次に現れて、退屈する暇もない。おもしろかった。フリント船長、オウム、一本足のシルバー、八銀貨、黒丸、ベン・ガンの洞窟・・・先日読んだ本の余波で、覚えのある単語が出てくるたびに、ほくほく、わくわく。
読了日:07月29日 著者:ロバート L スティーブンソン
まるまるまるのほん (単行本◆)まるまるまるのほん (単行本◆)
この絵本、楽しそうなのに、どんな本なのかさっぱりわからず、一体、どうなってるのか興味津津だったんです。手に持ったら、あれ、ことのほか重いじゃないですか。←わたし、暗示にかかりやすい。それも自己暗示(笑) この絵本をめくっていると、自然、顔がほころんできます。ついつい手を動かしてしまいます。楽しい〜。うふふ、こんなの、ありなのね。
読了日:07月28日 著者:
ヘヴン・アイズヘヴン・アイズ
闇の中でひときわ輝く明るい光。光も自由も遠い世界にあるのではなくて、気がつかないだけで自分の内にあるもの。その光が自分を照らし変えていく、周りの人をも変えていく。闇と狂気の中から立ちあがってくる無垢で美しいものに打たれます。
読了日:07月28日 著者:デイヴィッド アーモンド
鳥の物語 (岩波文庫 緑 51-2)鳥の物語 (岩波文庫 緑 51-2)
中国、日本、インド、聖書の説話や故事などを題材にして、鳥の側から語った、大人のおとぎ話。珠玉の、という言葉がふさわしい。人の業の深さを鳥の皮肉な目で見せられながら、貪欲に生きる人間たちも、やはり愛おしく感じてしまう。「いかるの話」の鳥たちの唄が好き。「・・・ひえ ひえ、・・・きび きび」
読了日:07月26日 著者:中 勘助
ツバメ号とアマゾン号(下) (岩波少年文庫 ランサム・サーガ)ツバメ号とアマゾン号(下) (岩波少年文庫 ランサム・サーガ)
旧訳に愛着がある分、正直、好きになれなかったらどうしよう、と思った改訳だけど、やっぱりツバメ号とアマゾン号は、ツバメ号とアマゾン号でした。よかったー。神宮輝夫さんの文庫版あとがきも、上橋菜穂子さんの解説もおいしいです。風をはらんで走る二艘の帆船が、また、この猛暑を迎え撃つ勇気(!)をくれました。本棚に、並んで走る二船のように、旧訳と新訳が並びました。うれしい。
読了日:07月25日 著者:アーサー・ランサム
最後の七月最後の七月
余分な説明をあえてごっそり省いて、さらりと書かれている別れ。でも、行間から滲み出てくる言葉にならない思いは大きいです。別れていく三人の前に広がる別々の未来、たぶん二度と重なることがない三つの未来に対して、「よし、来い」と言うような覚悟が爽やか。七月の猛暑の中で、なんだか元気になる。
読了日:07月24日 著者:長薗 安浩
生半可な学者―エッセイの小径 (白水Uブックス)生半可な学者―エッセイの小径 (白水Uブックス)
「・・・と考えるのは私だけだろうか」「・・・であることを教えられたような気がする」「・・・なのだと考えさせられた」という言葉が文章の結び方頻度ベスト3だと教えられた気がする。自分の文章も、これらの言葉をなんと多用していることか、とつくづく考えさせられた。これからはこの三つの言葉は使わない、と考えるのは私だけだろうか。(柴田元幸さんのエッセイは初めてだけど、こんなにおもしろいとは。しかも30代の文章、若々しいです)
読了日:07月22日 著者:柴田 元幸
アフリカで一番美しい船アフリカで一番美しい船
第一次大戦のさなか、中央アフリカの湖の覇権を争う馬鹿馬鹿しさは、喜劇のよう。そのなかで、一筋縄ではいかない人間たちの凄さに魅せられました。偉大さに圧倒され、畏敬を感じつつ、しかもおもしろくてかわいいものだ、と思えるなんて、すごい。訳者あとがきがいいです。物語を充分堪能した後、思いがけず上等のデザートが出てきたみたい。
読了日:07月21日 著者:アレックス カピュ
ツバメ号とアマゾン号(上) (岩波少年文庫 ランサム・サーガ)ツバメ号とアマゾン号(上) (岩波少年文庫 ランサム・サーガ)
祝☆少年文庫入り。少年たちの会話はより洗練(?)された感じ。全体的に片仮名が多い印象です。「間切る」「転回用意」「右舷開き」などの重々しい言葉が変わってしまってちょっとさびしいけれど、こちらの訳も好きです。どこが違うかな、と旧訳を傍らに置いて読んでいましたが、それは最初だけ。たちまち本の世界に引き込まれてしまいました。気持ちのよい風の吹く夏が今年また戻ってきた。
読了日:07月20日 著者:アーサー・ランサム
とむらう女 (オールタイム・ベストYA)とむらう女 (オールタイム・ベストYA)
何かを乗り越えて子どもたちは大人になっていきますが、この物語では、死を受容することを通して、少女は成長します。死と生とを同じ重さで受け入れること。それが、大人になる、ということのひとつのプロセスなのだ、ということを、静かに見せられたような気がします。
読了日:07月19日 著者:ロレッタ・エルズワース
オリガ・モリソヴナの反語法 (集英社文庫)オリガ・モリソヴナの反語法 (集英社文庫)
力強い文章に最初から引き込まれました。おもしろかった。この物語全体が、日本と自分自身を逆さまに写す「反語法」のようにも思えてきます。印象に残るのはラーゲリの収容所で「寓話のおかげで生き延びた」と語る女性の言葉。付録の池澤夏樹さんとの対談もよかったです。
読了日:07月17日 著者:米原 万里
二年間の休暇(下) (福音館文庫)二年間の休暇(下) (福音館文庫)
読む速度は下巻になってますます加速。島に人影をみつけたところからは一気に読んでしまう。その一方で、彼らの規律正しい生活に感心。選挙によるリーダー選び、それぞれに役割分担、一日の時間割を決め、揃って勉強をするなど、生き延びた秘訣は、ここにありそうな気がします。
読了日:07月15日 著者:ジュール ベルヌ
二年間の休暇(上) (福音館文庫)二年間の休暇(上) (福音館文庫)
結末はわかっていますが、そんなの、問題じゃないです。とってもおもしろい。年齢も、個性も雑多な十五人。それぞれのプライドや人に言えない悩みなど。冒険。全部抱き込んでの漂流生活。島の地図を広げて、探検済みの地に名前を付けるところが好きです。
読了日:07月15日 著者:ジュール ベルヌ
気になる部分 (白水uブックス)気になる部分 (白水uブックス)
読んでコロコロ笑っていられるのは、自分とは無関係のぶっとんだ世界だなあ、と安心していられるから。でも時々、「あ、そういうこと自分にもあるかも」と思ってしまうと、ごめんなさい、ちょっと悲しいです。「・・・あんな本を訳したのは、やっぱりこんな人でした」って、カバー折り返しの「著者紹介」までもがおもしろかった。ニコルソン・ベイカー、読んでみたくなりました。
読了日:07月14日 著者:岸本 佐知子
釣り師の休日釣り師の休日
アーサー・ランサム、ケネス・グレアム、ウィリアム・ワーズワース・・・皆さん、釣り人でしたか。釣りは全然できない私だけれど、熱っぽく蘊蓄を語る通人たちが微笑ましいと思う。読んだ覚えのある一節も、ちっとも興味のわかないマニアックな話さえも、四季おりおりの自然を背景に、聞いていれば、ゆったり贅沢な時間を過ごしている気分になります。
読了日:07月14日 著者:エドワード グレイ,W.B. イェイツ,H.T. シェリンガム,ジョージ オーウェル,アーサー ランサム,飯田 操,George Orwell
だあれもいない日―わたしのおじいちゃんおばあちゃんだあれもいない日―わたしのおじいちゃんおばあちゃん
覚えのある風景です。詩編から鮮やかに浮かび上がってくるものは広くつながっていて、大きな、とりとめのない物語のよう。幸福と調和の物語。弱っているときにこの本を読んだら、きっとあまりに辛すぎる。消えてしまった、懐かしいもの、愛おしいものを、鮮やかに見せられたようで、しかも取り戻すことのできない宝物のありかを再確認してしまう。
読了日:07月14日 著者:山中 利子,やまわき ゆりこ
少年の魔法のつのぶえ―ドイツのわらべうた (岩波少年文庫 (049))少年の魔法のつのぶえ―ドイツのわらべうた (岩波少年文庫 (049))
わらべ歌はいいな。そこに暮らす人たちの顔がぼうっと浮かび上がってくる。生活が見えてくる。そして、自分の足元の暮らしもまた思い出す。自分の歌も思いだす。
読了日:07月13日 著者:ブレンターノ,アルニム
愛の続き (新潮クレスト・ブックス)愛の続き (新潮クレスト・ブックス)
美しくて確かなものと信じて疑わなかったものが、実はぽっかりと大きく空いた深い穴だったかもしれないと気が付いていく怖さにたじろぎますが、最後にふいに現れたものに、驚き、ここまで投げずに読んできてよかった、と思ったのでした。これ、目に見えなかっただけで、最初から最後まで変わらない形でずっとあったんですよね。
読了日:07月13日 著者:イアン マキューアン
猫は知っていた―仁木兄妹の事件簿 (ポプラ文庫ピュアフル)猫は知っていた―仁木兄妹の事件簿 (ポプラ文庫ピュアフル)
50年前の個人病院の佇まいが面白い。看護婦部屋なんてのがあって、看護婦は、ここに起居しているらしい。医師の自宅台所で、入院患者や看護婦の食事を用意しているらしい。主人公たちが病室に下宿するというのも大きな驚き。今の病院と大きく違う、と感じたのは駐車場がないこと。門から病院の玄関までの庭や、玄関を入ってすぐ右手にある薬局の窓口など、はるか昔(?)の罹りつけ病院を彷彿として懐かしかった。
読了日:07月12日 著者:仁木 悦子
私の大好きな探偵―仁木兄妹の事件簿 (ポプラ文庫ピュアフル)私の大好きな探偵―仁木兄妹の事件簿 (ポプラ文庫ピュアフル)
「水曜日のクルト」の透明感は、推理小説でもそのまま。血なまぐさいはずの殺人事件も仁木妹の目で見ればどこかほんわかムードで、童話のよう。
読了日:07月10日 著者:仁木 悦子
黄色い本 (アフタヌーンKCデラックス (1488))黄色い本 (アフタヌーンKCデラックス (1488))
これが読書の喜び。こんな読み方がもうできなくなってしまったのは、少しさびしい。それを知っている人は少ないかもしれないけど、名もなき人の中に広く豊かな世界がある。それはかけがえのない素晴らしい宝物。
読了日:07月09日 著者:高野 文子
サリーの帰る家サリーの帰る家
自分のいる場所を「家」と感じられる、その場所に必要な自分であると思える、それが、自立の道でもあったのだろう。サリーの「家」はこれからどう変わっていくのだろうか。あれこれの「どうして」や「それから」が気になって、つづきが楽しみで待ちきれない。
読了日:07月09日 著者:エリザベス オハラ
仮往生伝試文(新装版)仮往生伝試文(新装版)
この不思議な読み心地は、そうだ、主語がわからないんだ。時代も。古典の話、作者の身近な話、また、創作なのか実話なのか、史実なのかも。さまざまな場面、時代が交錯するので、より一層不思議な読み心地。とはいえ、これはわたしにとっては挫折本です。読んでよかったなんて恥ずかしくとても言えない。往生というものを忘れたいより、もうちょっと近づけて考えることができるとき、でもあまりそれが迫って感じられるときじゃないとき、そういうときにもう一度ゆっくり挑戦したい。
読了日:07月08日 著者:古井 由吉
はみだしインディアンのホントにホントの物語 (SUPER!YA)はみだしインディアンのホントにホントの物語 (SUPER!YA)
軽快に読めてしまうけど、後になって、じわじわと広がっていく思い。それは、たぶん、ここに書かれている問題が、保留地の深刻な問題を超えて、わたしたちにとっても身近な問題を含んでいるから。ぼこぼこにされてもなお愛おしいと思える人間たちの物語であり、夢を持ち、かなえるために行動を起こす物語でもある。すがすがしいと思う。ずっと読んでいたい、と思うような。
読了日:07月07日 著者:シャーマン・アレクシー
秘密の手紙―0から10秘密の手紙―0から10
少し強引なくらいの友だちに引っ張られるようにして、自分のまわりには広い世界があること、たくさんの人がいること、たくさんの生活があること、などに気がつき、少しずつ世界を広げ、無着色だった生活が彩色されていく過程を読むのが楽しい。わたしたちは、なんて色彩豊かな世界で暮らしていたんだろう、と改めて周りを見回したくなります。
読了日:07月05日 著者:スージー・モーゲンスターン,Susie Morgenstern,河野 万里子
メイク・ビリーブ・ゲーム (SUPER!YA)メイク・ビリーブ・ゲーム (SUPER!YA)
名前はその人自身であり、名前を失うことは「死」ともいえるかもしれない。怖いのは苦手だけど、読み出したらたくさんの「なぜ」や「何」が気になって、途中でやめることができなかった。だけど終盤はちょっと急でしたか? 戸惑いのままに、ハッピーエンドも感動というより「そうなのか〜」で終わってしまったのが、少し残念な気がしました。
読了日:07月04日 著者:リアノン ラシター
博物誌 (新潮文庫)博物誌 (新潮文庫)
釣竿の上に止まったかわせみを「私は、翡翠に樹と間違えられた」、ノミは「ばね仕掛けのタバコの粉」で、ろばは「大人になったうさぎ」という。彼は、影像(すがた)の猟人なのだといいます。この猟人の狩りはなんとやさしく、気が長いことか。確かな腕前で、カメラでは決して写し取れないものまでもしっかりと写しとって見せてくれる。どこから読んでも平和で幸せな博物誌は、詩集といっしょにいつも鞄の中に。
読了日:07月02日 著者:ジュール・ルナール
愛についてのデッサン―佐古啓介の旅 (大人の本棚)愛についてのデッサン―佐古啓介の旅 (大人の本棚)
「人間っていつも失った何かを探しながら生きているような気がする」 探す物語でした。でも執拗に探す物語ではありませんでした。探される物や人が、探して欲しくないと望むなら、そっとしておく。あえて探さないから生まれる静かな余韻が好きです。
読了日:07月01日 著者:野呂 邦暢

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