「ん」まであるく

「ん」まであるく「ん」まであるく
谷川俊太郎
草思社
★★★


「ん」という音も字も好きだ、という谷川俊太郎さんのエッセイ集。
「ん」まであるく・・・考えてつけた題名ではないそうです。肩の力を抜いて読もう・・・

>楽しむことのできぬ精神はひよわだ、楽しむことを許さない文化は未熟だ (「楽しむということ」)


>けなされたことはすぐに忘れるが、ほめられたことはいつまでもよく覚えているものだ。(中略)ほめられた自分が誇らしい、ほめられた自分が嬉しいというよりも、ほめられたことで自分が他人とつながり得たと思う、その気持ちのほうが私には強い。  (「ほめられることはほむべきかな」)


>子どもは必ずしも親や教師が与ええるもの、もしくは与えたいと望むものばかりに触れるのではない。絵本に限らず、日常用いられている器物のはしばしに至るまで、子どもの生きる環境と無縁ではあり得ない。いくら美しい絵本をそろえても、毎日の暮らしにあらわれるおとなたちの感性や考えかたがそれらを裏切るのでは、絵本の力も働かないだろう。  (「一冊の絵本」)


>喜びに理由があるのなら、私たちは幸せになるために、数限りない理由を捜し求めざるを得なくなる。理由がなければ喜びを感じられないから、どんな喜びにもその理由があると思い込む。そして喜びをその理由に見合った小さなものにしてしまう。  (「理由なき喜び」)


詩人の言葉は時に難解で、たとえば「書くとは、世界を読むことに他ならない」など、イメージできなくて、
もう少し説明してほしい、と文の前後をさがしてしまいます。
ひとつひとつのお題の文章が短く、ぴりりと引き締まっているのですが、どんどん別の話に移ってしまうし、
ぎゅうぎゅう詰め込んであるし・・・
ああ、これはきっともっとゆっくり読むべき本なのでしょうけど、興味のない話題についてはちっとも乗れない。
興味のある話題については物足りない、もっと語ってほしかった。
少し散漫な印象も持ちましたが、ぼんやり読んでいるとどきっとする言葉にであったりするので油断できない本でもありました。