『若かった日々』 レベッカ・ブラウン

離婚した亡き両親の思い出、幼い日の記憶の断片、初恋の思い・・・現在の自分を形作るさまざまなことについて書かれた短篇が13.
小説というより、自伝的な感じ。むしろエッセイかな。

訳者あとがきがあまりに素晴らしくて、「書くことないじゃん」って感じなんですけど・・・

以前読んだ「体の贈り物」に感じた完成度を思うと、この本はなんて不器用で時に感情的なのだろう。
痛々しいくらいに。
これは作者自身が作者自身のために書いたのではないか、この本を書くことを苦行として自分に課したのではないか、と思うほどに。

親について語ったモノ(「暗闇が怖い」「魚」「受け継いだもの」など)が特に心に残っている。
親からもらったもの、もらわなかったもの(遺伝も含めて)
愛されたこと愛したこと、疎ましく思ったこと、親の大きさ、親の(人間としての)卑小さ。

  >こうした、受け継いだものを、私は恐れ、
   それと同じくらい、欲する。
   二人から与えられたものを私は持ち続けたい、
   それをみんな取り除いてしまいたい。
   二人と同じところを私は終わらせたい。
   それがいつまでも終わってほしくない。

親は、年齢関係なくどこまでも親。自分の上にべったり張り付いている。愛しても憎んでも疎んじても。
自分のなかでさまざまに整理し、変容し、やがて、親もまた自分と同等なひとりの人間、と思えるときが本当に大人になるときなのかもしれない。
言うは易し、だけど。(自嘲)
そういう意味で、この本を書き終えた作者自身が、新しい生を生き始めるような、若き日々と決別したような、そんな印象をもったのでした。
そして、はじめて、嘗ての自分の日々を「若かった日々」と呼べるのかもしれない、と思ったのでした。