『青春のオフサイド』  ロバート・ウェストール 

第二次世界大戦のすぐ後の物語。
主人公ロバートは17歳。グラマースクールに通う。
「陰湿ともいえる英国の有名な階級制度」(訳者あとがきの言葉を借りて)での労働者階級の家庭の一人息子。
この少年と32歳の女性教師ハリス先生との秘密の恋愛を中心にして、青春期の少年の心情を丹念に描いていく。
この心の描写が凄くリアルで、リアルすぎて思わず目をそむけたくなるほど。
ロバートだけじゃなくて、そのまわりの人間達、ジョイス、ウィリアム、ジャックやジョン・ボウズ・・・みんなそれぞれに一人の人間として、その人物像がくっきりとうかびあがってくるのです。

32歳と17歳のスキャンダラスな恋愛。

苦々しくて、陰湿で、どろどろして、気が滅入るような恋愛。

でありながら、甘やかで美しく、気高くさえ感じられるものがあって、両者がまったく矛盾しない・・・
互いに高めあい、低めあい・・・

そして、ラグビーチームの爽快なハチャメチャさ。
罠や、陰湿ないじめがあり、一概に爽やかとは言えないねじくれた友情。
生徒間にもある階級差のわだかまり
・・・・・・

親子ほどに歳の違うハリス先生との恋愛については、なんとなく「朗読者」の1章でのエピソードを彷彿とさせるものがあり、印象がだぶってしまいました。
主人公が男の子なので、共感、というよりは、「そうか、このくらいの男の子って、そうなんだ」と納得させられながら読みました。
どちらにしても、自分の中学・高校のころを振り返っても、苦い思い出のほうが多く、(事の重大さは関係なく)大いに挫折感を感じ、どん底感を味わっていたような・・・そんなこんなが思い出されるのでした。楽しいことも一杯あったけどね…

ラストに近付くにつれて、だんだん、にっちもさっちもいかなくなってきて、いやいや、これはどう決着がつくのかな、と思っていたら、なんとまあ!
すっきりと納得できる展開で、よかった。

ハリス先生のその後の生き方については・・・なんだか切ないなあ。戦争さえなかったら、この人の人生は180度変わっていたはず、と思うとね。
ジョイスもかわいそうだ。あんまりな扱いじゃないか。この子のことがあるから、主人公が嫌いである。でも嫌いな主人王にくっついて、最後までおもしろく、納得して読んでしまう