『ホリス・ウッズの絵』  パトリシア・ライリー・ギフ 

何らかの事情で現在家庭がない子供が、新しい家族の中に迎え入れられていく物語を今年になっていくつか読みました。
そういう本を選んでいるわけではないのですが、扉を開いてしまうと、そうなのです。
これらの本は、ラストシーンが最初からわかってしまいます。ただ、そこへ行き着く過程がそれぞれ違っていて、「よくできてる」とか「イマイチ」とか感じるわけで、ラストが決まっている分、そのプロセスに対しては、生半可な感動ものだったら許さないよっときつい目をむけたくなるのです。

この本もその一冊でした。
主人公ホリス・ウッズ、その名前は、自分が生まれてすぐ裸のまま置き去りにされた場所の名前でした。
11歳で、あふれんばかりの絵の才能を持ったこの少女は、あちこちで問題ばかりおこして、里親から里親へとたらいまわしにされる問題児でした。
今、老いた彫刻家ジョージーと暮らしながら、ジョージーに対して心開いていくホリス・ウッズは、しかし、夏のあいだともに暮らしたリーガン家のおやじさんとイジー(母)、スティーブン(兄)を懐かしく思い出すのです。彼女が唯一家族になりたい人たちだった。彼女を自分の娘として迎え入れようとしてくれた人たちだった。だけど・・・
ジョージーとの愛しい生活の描写。
その隙間隙間に、ホリスは夏に描いた自分の絵を一枚ずつ取り出し、少しずつ夏の出来事を語るのです。
小出し小出しに夏の輝きがわたしたちの目の前に現れます。
それだけに、何故、ホリスはその家を飛び出してしまったのか、と不思議に思うのでした。

よかったです。
クリスマスの奇跡も感動しました。
ジョージーという女性も魅力的でした。登場人物中彼女が一番魅力的だった。ホリスに帽子をかぶせて鏡の前に立たせ、彼女が美人であることを自覚させる場面なんて大好き。
その彼女が少しずつ呆けていく姿は切なくて切なくて。
ジョージーと自分の生活を守ろうとするホリスがいじらしくてたまりませんでした。

リーガン家の人々、とても魅力的な家庭です。父も母も朗らかでやさしく、あたたかい。スティーブンなんて、あんな兄さん、わたしだってほしいよ。
だけど、存在感がうすい。

ホリスの回想として描かれるせいか、 一番感じたのは「なんでそうまでしてホリスを娘にしたかったのか」ということが、わかりませんでした。