『人間になりたがった猫 』 ロイド・アリク゛ザンダー 

魔法使いに頼んで人間にしてもらった猫のライオネルが、初めて行った街で、勝手がわからないことからいろいろな事件に巻き込まれます。
橋を渡るのにお金を取られるわ、食べ物もお金と交換したがるわ、喧嘩して命まで盗ろうとするわ・・・

痛烈な文明批判です。それにしても、おもしろかったです。ライオネルが姿は人間になっても、心は猫のまま。素直ですれていないのがとても好感をもてました。そして、軽妙なテンポで、つぎからつぎに事件がおこるわ、魅力的な登場人物が出てくるわ、軽快な感じで、あっというまに読み終えてしまいました。

ずるがしこい悪役が次々に登場して、ひどい目にばかりあうライオネルですが(そのわりにまったくこたえていないところがすごい)、その無邪気さが、街の人々を、理不尽な法(?)を押し付ける悪人から救うことになるのです。
そして、人情のある人たちにも出会います。かわいらしい恋のお話もあります。

わたしは、あのお医者さんが好きです。ラテン語(?)を乱用し、インチキっぽい薬を売ろうとする、うさんくさい登場の仕方をしたのですが、なんともお人よしで、素敵な人でした。
人間すてたもんじゃないじゃないか、とうれしくなります。

やがて、ライオネルは、魔法使いの元に戻ることになります。猫に戻るのか、人間のままでいるのか・・・