『しずくの首飾り 』 ジョーン・エイキン

法螺話とファンタジーの境界線はどこにあるのでしょう?
エイキンが小さな甥や姪たちに語り聞かせるために書いたお話八つ。
ロマンチックなのやら、ほんわかおかしいのやら、突拍子もないのやら・・・

お気に入りは「空のかけらをいれて焼いたパイ」
空のかけらを入れたまま焼いてしまったので、ふんわりと宙に浮かんでしまったアップルパイ。
おじいさんやおばあさんを乗せて、猫、アヒル、羊・・・挙句の果てに象まで乗せて・・・
小さなパイにどうやって?と不思議なんだけど・・・
乗せて欲しい人と乗っている人たちのお定まりの問答歌が楽しいんです。
最後に「一緒に乗せてくれますか?」「いいとも、おのりよ」で、どんどん増えていくのがいいな。で、最後についたところは?
ラチョフの絵本「てぶくろ」(ウクライナ民話)を思い出します。
読み聞かせ、というより、この繰り返しのリズムは、しっかり覚えて、歌うように、聞き手の顔を見ながら、語り聞かせたいものです。

「三人の旅人たち」も好きです。(これは国語の教科書に載ったことがあるそうです。)
さばくの駅の三人の駅員さんが代わりばんこに旅をする。それぞれの旅がそれぞれに素敵なのですが、三人目の旅は特に印象的です。
発想を変えさえすれば、みつかる素敵なものをわたしたちも見逃してしまっているのかもしれない、と思いました。
すまし顔の文体に、「まあ、とぼけた顔して! ほんとはしてやったりという気分でしょう」と思う。
でも、おみやげにレモンをいただいたからいいの。

「パン屋のネコ」も好き。
イースト入りの温かいミルクを飲んだネコが、膨らんで、膨らんで・・・どうなるのでしょうね。
映像がくっきりと目の前に浮かんでくる奇想天外さが好き。最後は楽しくなります。

表題作「しずくの首飾り」、
北風が、名づけ子にプレゼントした首飾りの実物をぜひぜひ見てみたいものです。
大英博物館あたりに展示してあったりしてね・・・