『竜の子ラッキーと音楽師』ローズマリ・サトクリフ

ある晴れた日、旅の音楽師が、海辺で竜の卵をみつけた。ばら色の斑点のあるクリーム色の卵。
卵は今孵るところ。
音楽師が子守唄を聞かせてやると、卵から竜の子どもが生まれた。
これが竜の子ラッキーと音楽師の出会い。
音楽師とラッキーは幸せな旅を続ける。
音楽師は愛する竜と一緒にいると、幸せで、次々歌が生まれてきた。
竜も、子が親を慕うように、音楽師を慕った。
しかし、ある秋の日、ラッキーは、旅の見世物師に盗まれてしまう。
深い悲しみに包まれた音楽師。歌を作れなくなってしまった音楽師・・・

柔らかく美しい色彩の絵本です。
まるで静かな音楽を聞いているときのように、快いお話。(この静かな心地よさは、「小犬のピピン」の読後感に似ています)
心から愛するものがいることが、私達に、どれほど大きな力を与えてくれることか―― “いっっしょにいると音楽が生まれる”という表現で、語られる愛情は、やさしく、かわいらしく、明るいのです。
そして、それは、他のひと(例えば病気の王子)も癒してしまう。
竜が仰向けに寝転んで、音楽師におなかをなぜてもらっている絵が好きです。仲良しでいいなあ。
足取り軽く歩いて行くふたりのラストシーンも好き。これは、きっと朝です。爽やかな朝の日差しを感じてうれしくなるのです。
心がほっこり温かくなるお話でした。