『どろぼうの神さま 』 コルネーリア・フンケ

子どもが急に大人になり、大人が急に子どもになったら・・・
孤児になったプロスパーとボーの兄弟は、叔母夫婦から逃げ出し、イタリア・ヴェネツィアで、「どろぼうの神さま」と呼ばれるスキピオと仲間に出会う。しかし、スキピオには秘密があって・・・
美しいヴェネツィアの町並み、サンマルコ広場、運河に浮かぶ島々。
さまざまな事情を抱えて逃げ出してきた子どもたちが寄り添って暮らす「星のかくれが」
人のいい私立探偵とのおいかけっこ。
ずるくて薄気味悪い古物商。
謎めいた伯爵との取引。
隠された素晴らしく美しくて不思議な伝説をはらんだ謎のメリーゴーランド。
そして、ある美しい伝説にからんだ冒険と少年たちの夢・・・

なんだか、古い子どもの本のにおいがするぞ。嫌いな匂いじゃないぞ。
500ページの長編がちっとも苦にならないテンポのよいスリルたっぷりの展開。
何よりも子どもたちがいい。
「浮浪者」と呼ばれるような暮らしをしていながら、良い家庭を持った子よりもずっとモラルがあって、ちゃんと生きている子どもたち。
互いに深い友情で結ばれている。
現代っ子というよりは、どこか神秘的でちょっと古臭い。
それがヴェネツィアという魔法っぽい町にぴったり似合っている。
先がまるで読めないストーリー。冒険なのに、品の良さがあって、夢っぽい。
もうほとんど星5つ、と思っていたのですが・・・

これだけ読ませる展開、広くて独特の物語世界をたっぷり見せてくれたのに、このラスト。
あっさりとすぱすぱと解決しちゃって、ちょっと待ってくれ。わたしには納得できない。

 あの子は結局自分の抱える問題に、最後まできちんと向き合うことなく、ああいう決着のつけ方をしてしまいました。
彼の外見だけが変わっただけで、何も解決していないような気がします。
本当に、本当に、これでよかったの?