『ゴールデン・バスケットホテル』 ルドウィッヒ・ベーメルマンス

 

ゴールデン・バスケットホテル

ゴールデン・バスケットホテル

 

 

ゴールデン・バスケットホテルは、屋根の上に金色のバスケットの飾りのついた古いホテル。ベルギーの古い町ブルージュにある。部屋数はそれほどないけれど、気持ちのよい宿屋だ。
このホテルに、お父さんといっしょに、小さな姉妹メリッサとセレステが泊っている。
二人には、見るもの聞くもの、体験すること、出会う人、なにもかもが面白い、楽しい。


ホテルの経営者の一人息子ヤンと仲良くなり、一緒に遊び、冒険した。ホテルの仕事を手伝うのも遊びのうち。
ヤンの部屋はホテルの最上階の屋根裏だけれど、楽し気な「テントみたいなとこ」だ。
ヤンのお父さんは、腕のいいシェフ。焼き立てのレモンスフレ(しぼまないうちに大急ぎで供される)がとてもおいしそう。
頼りになる食堂管理人のムッシュ・カルヌヴァルは、ある時、燕尾服のたくさんのポケットの中身を全部出して、二人に見せてくれたが、ポケットのなかが、まるでよくできた作業室や案内所みたいだ。(ポケットの中身を外に出したらムッシュのからだは「だいぶほっそりして見え」た。)
個性的な泊り客たち、ディナーにやってくる常連さん、誰もかれもが、二人の近づきになるのを待っているよう。


この小さな町は、鐘楼の足元に「まるでトルコじゅうたんのこまやかな模様みたいにひろがって」いる。
まずはみんなで鐘楼を訪ねた。
アヴィニヨン橋を渡り、その下をヤンのボートで下った。
思いがけない形で訪れた博物館では、王家の四輪馬車に乗った。
あちこち散策すれば、いつのまにかとんでもない冒険になってしまうのだけれど、いつだって、大人たちのおおらかな見守りのうちで、伸びやかに遊びまわる、日常から離れた休日。
旅先ならではの、ちょっと浮つくこともオーケイの楽しさは、なんて輝いていることか。
全力で楽しむ子どもたちの一分一分がとても素敵で、そのままホテルの屋根の上の金のバスケットの中にしまってとっておきたいようだ。


そうそう、町の中で、先生に連れられて、二列に並んで散歩する12人の女の子たち(紺のケープ付きの服、赤いリボンのついた麦わら帽子)に会ったことも書いておかなくては。
先生と手をつないだ一番小さい子が、マドレーヌでした。