『分かれ道ノストラダムス』 深緑野分

 

 

分かれ道ノストラダムス

分かれ道ノストラダムス

  • 作者:深緑 野分
  • 発売日: 2016/09/21
  • メディア: 単行本
 

高校一年生の日高あさぎは、二年前に亡くなった同級生、基の遺族から「持っていてほしい」と基のノート(日記?)を委ねられる。
あさぎは、喧嘩したまま亡くなってしまった基の、亡くなる前の行動を考えてみる。もし、彼が、どこかで、ちょっとだけ違う行動をしていたら、違う未来(彼が死なずに済む未来)がありえたのではないかと。
同じクラスの八女くんに手伝ってもらい、二年前の「もしも」を探し始める。


1999年6月6日。
小渕首相のころだった。
パソコンはすでにあったけれど、「ネットは重いし高いし」で、誰もが簡単に使えるものでもなかった。
あさぎは制服のポケットにGPSを入れているが、町の中には、公衆電話もあちこちにあった。
二十年くらいなら、ほんの昨日よ、昔なんて言えないよ、と思っていたけれど、どうだろう。色々なことがどんなに目まぐるしく変わってしまったことか。
本の中に見られる、いろいろなその時代らしさに、ああ、そんな時代だったのか、と驚いている。持ち物や流行りもの、細々としたあれこれが懐かしくて、忘れっぽい自分に呆れている。


そして、ノストラダムスの大予言
予言の「七の月」が目前に迫っている町はざわざわしている。
基の家のある虎目市では、大予言を恐れる人たちによる新興宗教が不穏な行動を始めている。


これは青春物語であるはず、身近な物語であるはず、と思って読み始めたのだけれど。
「二度と会えない少年との、実現不可能な分かれ道」探しは、ミステリの始まりであり、とんでもない冒険の始まりだった。
殺人事件が起こり、知人は行方不明。そして、後をつけてくる怪しい人物……


最初から、なんだか、嫌な感じがあった……
嫌な感じ、と思うのは、
「きっかけ次第で、相手は知らない人になってしまう」こと。
人は変わるのだろうか。変わるのは相手ではなくて、そう思う自分自身のほうなのか。
足元が揺らぐようで、どんどん不安になってくる。


今、忘れたくないことは、あさぎという少女の中で、何が変わって何が変わらなかったか、だ。
少女のたどりついた場所を、ちゃんと見ておかなくては、と思う。
大丈夫、ここには気持ちの良い風が吹いているから。