2013年6月の読書メーター
読んだ本の数:25冊
読んだページ数:5778ページ
いっしょだよの感想
「いっしょ」が、こんなにきれいだ。願わくは、私のたくさんの「いっしょ」が、それぞれ姿は変わっても、美しい「いっしょ」でいられたらなあ。あの「いっしょ」も、この「いっしょ」も、俯瞰したらどんな「いっしょ」に見えるのだろう。
読了日:6月29日 著者:小寺 卓矢
リボン (一般書)の感想
誰かと誰かを結ぶ永遠のリボン。小鳥の力を借りて、ひとりぼっちだと思っていた自分が何かと繋がっていたことを思い出す。思い出しの様子があまりにやさしいので、ありがとう、と言いたくなります。だけど、どこにもだれにも属さない、自由なリボンが、ちょっと寂しいような気がした。
読了日:6月29日 著者:小川糸
スターリンの鼻が落っこちたの感想
ホラー並みの恐ろしさ。いいえ、ホラー以上。だって、これは現実。それは、これからもどこからか、ひっそりと生まれいでて、気がつかない間に手のつけられないほど膨れ上がってしまうのではないか。一つの教室から聞こえてきた、ゴーゴリの『鼻』について語る教師の言葉が灯のように思えた。
読了日:6月27日 著者:ユージン・イェルチン
時計を忘れて森へいこう (クイーンの13)の感想
気持ちがいいなあ。本の中に入っていって深呼吸しているような気分だ。この本の登場人物の話す言葉が、風に揺すられる木の音みたいに聞こえるのだ。この本を読むことはそのまま森の中にいることのようだった。何も解決しなくてもいいから、この物語の森にもうちょっといたかった。
読了日:6月26日 著者:光原 百合
明日は遠すぎての感想
惹きつけられずにいられない力強さ、誇り高さ。主人公たちは、決して遠い人ではない。けれども、その一方で一途に故国をじっとみつめるその横顔に、圧倒されてしまう。
読了日:6月23日 著者:チママンダ・ンゴズィ・アディーチェ
みんなの家出 (福音館創作童話シリーズ)の感想
過激なタイトル、挿絵も不思議。家出の夢か。わたしたちのこの体が家なのかもしれない。古い家を脱ぎ棄てて新しい家を探すもよし、戻るもよし。子どもが小さかったころ、熱中してしきりに作っていたヒミツキチ。あれも一種の家出だったかな。どこか遠いところに飛びたっていくための無意識の練習だったのかな。
読了日:6月22日 著者:藤田 のぼる
鳥と雲と薬草袋の感想
梨木さんの窓辺から飛んだ鳥や雲は、日本じゅうをめぐって、わたしのところに飛んできてくれたようだ。鳥の銜えてきた薬草袋の中には、梨木さんの思い出のハーブといっしょに、地名についての手紙を入れて。次から次へと、飛んできてくれた。「日向」「佐多岬」がことに心に残りました。
読了日:6月21日 著者:梨木 香歩
人間喜劇 (ベスト版 文学のおくりもの)の感想
思えば、この物語は家に帰る物語であったかもしれません。最後にとても大きな「家に帰る」場面に出会います。沁み入るような喜びとともに。この「家」は、神さまの家だったのかもしれない。そして「イサカ」という町が、帰るべき「家」そのものであった、と思ったのでした。
読了日:6月20日 著者:ウィリアム サロイヤン
終わりの感覚 (新潮クレスト・ブックス)の感想
「歴史とは、不完全な記憶が文書の不備と出会うところに生まれる確信である」そうだ。一人の人生も歴史だ。ラストでは、わたしは物語そのものから締め出されたのだ、主人公に裏切られたのだ、と恨みがましく思う。ラストが「答え」ではないこと、決して「答え」は得られないことを、噛みしめています。
読了日:6月19日 著者:ジュリアン バーンズ
6日目の未来 (新潮文庫)の感想
未来のフェイスブックを覗いたことがあってもなくても、いろいろな形で、こんなふうに自分と向かいあうのはいい。過去も、細い細い選択の糸で繋がれて、ここまで伸びてきているのだなあ。15年後、20年後・・・無限大の未来のどこに自分は着地しているのだろう。
読了日:6月17日 著者:ジェイ アッシャー,キャロリン マックラー
白い人びと―― ほか短篇とエッセー (大人の本棚)の感想
『白い人びと』美しい物語であるけれど、不安になってしまう。あまりに「白い人々」に近づきすぎていること、そちらのほうへ顔を向けすぎることに、後ずさりしたくなる。愛息を失った悲しみが生み出した物語だったのだろうか。『わたしのコマドリくん』はよかったな。何の束縛もない自由な友情が、羨ましいくらい素敵でした。
読了日:6月16日 著者:フランシス・バーネット
わからん薬学事始2の感想
一巻よりもとりとめがなくて、どたばたしているように感じたけれど、たとえば、草多の出生に関わる謎は、どの辺を掘り起こせばいいのか、その方角にあたりをつけてみたがどうだろう。北海道でこぼこツアー楽しかったな。双子の夏の土産話はゆっくり聞かせほしかったな。
読了日:6月15日 著者:まはら 三桃
黒い雨 (新潮文庫)の感想
…だんだん、この手記の内容よりも、手記を清書し続ける重松のことが気になってくる。どんな気持ちで、綴り続けているのだろう。まるで憑かれたように。あの地獄をくぐりぬけ、でもどこまでも追ってくる地獄。書くことだけがそれでも生きている、という証しであったかもしれない。
読了日:6月14日 著者:井伏 鱒二
ぬすみ聞き―運命に耳をすましての感想
奴隷としての子ども時代しかなかった子どもたち。緊迫感漂う危険な仕事に混じるわずかばかりの平安とも言えないくらいの平安、漏れ聞こえる詩に聞き入る少女の横顔が、その自由で瑞々しい感性が、痛みを伴い胸に広がる。奴隷制は残酷で憎むべき制度であると静かに強く訴えかける。
読了日:6月13日 著者:グロリア ウィーラン
なつかしい時間 (岩波新書)の感想
読書の事、言葉の事、風景の事、ほんとはもっとゆっくり考えながら読むのが相応しい本だ。各章には、たくさんの引用があり、読書案内としても魅力的。こんなに急いで読んでしまったことが申し訳ない。また読もう、ゆっくり読もう。また読む日を含めての「読書」が素敵だ。
読了日:6月12日 著者:長田 弘
紙の民の感想
痛みを抱えた者同士が相手を叩きのめそうとしている。戦争というより、取っ組み合いのふざけっこみたいだ。作者と作中人物の戦争、そもそも勝敗なんて成立しないはず。深い傷をなめることもできず、滅茶苦茶に掻き壊しているようにも見える。笑うに笑えない痛ましさを感じるが…。
読了日:6月11日 著者:サルバドール プラセンシア
マルセロ・イン・ザ・リアルワールド (STAMP BOOKS)の感想
彼の前には、いくつもの未来が広がっていた。そのなかから、彼は自分の未来を選び取ったのです。覚悟して、心して…選び取った。一人の青年の成長がこれほどまでに清々しく爽やかに、そして美しく描かれたことに、洗われたような心地良さを感じています。
読了日:6月9日 著者:フランシスコ・X.ストーク
ガンピーさんのふなあそび (ほるぷ出版の大きな絵本)の感想
(再)草や花の匂いを運ぶ風や、さわさわ鳴る葉摺れの音、小鳥たちのさえずりが、遠くのほうから聞こえてるような気がする。ガンピーさんをはじめとしたみんなの顔のおだやかさも好きです。あるかなきかの表情が、いろいろな感情や表情、声をもった読み手の気持ちをちゃんと舟に乗せて、一緒に連れて行ってくれる気がするのだ。
読了日:6月8日 著者:ジョン バーニンガム
チボー家の人々 (13) (白水Uブックス (50))の感想
時には、人間がまるで風に吹かれて飛ばされる塵のようにも思えた。主人公たちも例外ではなかった。絶望の中で彼が書いた「まだ生の鼓動がある」この生の鼓動は幻なのだろうか。わからないけれど、それでもその力強い鼓動に耳を傾けずにはいられないと思うのだ。
読了日:6月8日 著者:ロジェ・マルタン・デュ・ガール
チボー家の人々 (12) (白水Uブックス (49))の感想
本当に四年しかたっていないのだろうか。そして、それでもまだ戦争は続いているのか。戦争が人々の体も心もこんなにも変えてしまったのだ、ということを目の当たりにして、寒々となる。懐かしい人々が穏やかな怪物のようにも見えて・・・薄気味わるくさえなる。
読了日:6月7日 著者:ロジェ・マルタン・デュ・ガール
([く]3-1)引き出しの中の家 (ポプラ文庫 日本文学)の感想
「あれ? ラストシーンが変わった?」と思った。あわてて単行本をひっくり返してみたけれど、変わってはいなかった。書かれていない場面、待ち望む場面、きっとあるはずの場面を、頭の中で作り上げ、本の中に書かれている気になっていた。でも、きっと! その瞬間を見たい!
読了日:6月6日 著者:朽木 祥
ゼラニウムの庭の感想
るるちゃんが書いてきたことは、あの人に対する彼女の感情や考えは、自分自身に対するものではなかったのか。ほかならぬ自分自身がここに生きてやがて死んでいくことの辛さ、気味悪さ、恐ろしさを、はては絶望を、だれかを鏡にして語っていたのではないか。
読了日:6月5日 著者:大島 真寿美
アンネ・フランクについて語るときに僕たちの語ること (新潮クレスト・ブックス)の感想
相手のことを分かるには、あまりに暗い溝がある。まして、共感なんてとても恥ずかしくて言えないんだけど、それでも、それでも・・・理解していることと、理解していなかったと知ることの間にある空間がきっとある。それを大切なものと感じることなら、きっとできると思う。
読了日:6月3日 著者:ネイサン イングランダー
大切なものは目に見えない―『星の王子さま』を読む (岩波ブックレット (No.387))の感想
王子さまはなぜ子どもの姿をしているのか。砂漠にひそむ《黄色い蛇》は、何を意味するのか。目に見えないものを信じるということはどういうことなのか。このブックレットをガイドにして『星の王子さま』を読んでみようと思う。王子さまにちゃんと出会い直したくなった。
読了日:6月2日 著者:宮田 光雄
農夫ジャイルズの冒険―トールキン小品集の感想
二次世界といわれるファンタジーの国とこちらの世界を自由に行き来する道案内について楽しい旅をしてきた気分だ。最後に、こちらの世界に送り届けてもらった気がする。二作目『星をのんだかじや』の美しさが心に残った。
読了日:6月1日 著者:J.R.R. トールキン
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