伊藤まさこの雑食よみ 日々、是、一冊。


本棚には、種類も様々、とりとめもなく並んだ本。
その本を開く時間、場所も様々。
そういうこと全部ひっくるめての雑食読み。
雑食、とはいえ、やっぱりこれはきっと伊藤まさこさんだけの本棚なんだなあ、と思う。
本棚から、生き方や暮らし方みたいなもの(の一部)がちゃんと顔をのぞかせる。


本についてのフォト・エッセイ(?)ですが、
集められた写真や文章は本についてだけではありません。
お気に入りの展示会の事(図録含む)や、大好きな本屋さんやブック・カフェのこと、人のこと・・・
本や出来事のチョイスはちっとも敷居が高い感じがないし、それに寄せる文章も、自分の生活の振り返りに繋がっていく。
気持ちがいいなあ。
気取りがなくて楽しげで、しかも丁寧。
ゆったりとくつろがせてもらいました。


好きな文章は、陸奥A子さんの漫画「こんぺい荘のフランソワ」に寄せて書かれたもの。
小学生のころ大好きだった漫画だそうです。
大人になった今、街を歩きながら、ふと見る風景になんとなく懐かしさを感じることがある、という。
それはなぜなんだろう、と思っていると、ある日、気がつくのです。
子どものころに大好きだった漫画の中の情景にとてもよく似ていることに。
この気づきのくだりが好き。
形のないぼんやりとした良いものが、ある日突然鮮明に見えて、さらにそのまわりまで明るくはっきりしてくる感じだろうか。
そうして、久しぶりに読みなおした本について、思い出を交えつつ語る文章は、
過ぎた日々に夢見たものへの愛おしみが詰まっていました。
この本や周辺に対する伊藤まさこさんの「気持ち」が好きだ、と思った。


「柳宋民の雑草ノオト」の紹介のところでは、文章に付された写真に「わあ」と声をあげそうになった。
「今日の散歩で出会った小さな草花たち」という伊藤まさこさんの言葉を添えて、
麻布の上にさまざなな雑草たちが8種、きちんと並べられていたのです。
がらにもなく(!)お行儀よく整列した雑草たちの姿に、自然に笑みがこぼれる。


紹介されている本屋さんや古本屋さんはどこも素敵で、いつか、いつか、ほんとうにいつか行ってみたい、と思う。
品ぞろえで一番気になるのが名古屋のコロンブックス。ここで紹介されていた本たちは、装丁が本当に美しいんだもの。
とてもちいさな写真が残念で、目を細めてなんとかもっとよく見えないか、やってみる。
顔を傾けたら、この本の奥においてあるあの本のタイトルが読めないか、やってみる。
これもこれも、絶対手にとってみたいのよ。そして、あとはどんな本が置いてあるのか知りたいのよ。


そして、どの本屋さんにも共通するのが、本棚! 本の詰まった本棚のたたずまいが美しくて、
ああ、本棚のある風景って好きだ、と思う。やっぱり本棚は語るのだね。
そして、素敵な本屋さんには、素敵な店長さんがいる。
引用されていた「メリーゴーランド 京都」の店長鈴木さんの言葉「本は、においも一緒に読む」を幸福な気持ちで噛みしめています。