11月の読書

11月の読書メーター
読んだ本の数:20冊
読んだページ数:4751ページ

帰命寺横丁の夏帰命寺横丁の夏
一途に信じ突き進む10歳の少年と、信じつつためらうことで深みをみせてくれる80歳の老人。どちら素敵だった。大人になるに従ってすっきりと片付かないものが増えていく。そのことにどのように向かいあうかを教えてくれたのが80歳の先輩のように感じた。一度きりの人生だから、この瞬間を大切に生きるろいうことを最もピュアに教えてくれたのは、10歳でも80歳でもなく、その中間でさえもない、時の流れからはみ出した一人の少女だった、ということも意味深い。
読了日:11月27日 著者:柏葉 幸子,佐竹 美保
メニメニハートメニメニハート
とってもおもしろかった。そして、爽快な読後感に、しばらく浸っていよう。女の子、かわいいなあ。とうれしくなる。男の子もだ。あの子もこの子も、ほんとうはどんな素敵な子なんでしょうねえ。みんなの額の上でいろいろな色のハートがダンスしているような気がしてくる。
読了日:11月26日 著者:令丈 ヒロ子
月刊 たくさんのふしぎ 2010年 08月号 [雑誌]月刊 たくさんのふしぎ 2010年 08月号 [雑誌]
言葉を記録する無機質な符号ではなくて一文字に感情までも籠める事が出来る文字。文字はそれだけで一番短い詩みたいだ。絵みたいだ。なんという豊かさだろう。柔軟に流れるように変化しながら、今日にいたる、そして未来に続く文字、生き物のようです。
読了日:11月24日 著者:
ヴァレンタインズ (エクス・リブリス)ヴァレンタインズ (エクス・リブリス)
たとえば、今でも互いのことを大切に思っているのに、大切の意味が違う、これ以上一緒にいることはできないと突然気づく。読んでいるうちに、自分の日常も本当に信じられるのだろうか、と不安になってきます。怖ろしい話なのです。でも、静か。このあとどうなるか見当もつかないけれど、主人公たちの静けさを今だけは守ってやりたい、そんなふうに思ってしまう。
読了日:11月22日 著者:オラフ オラフソン
にんじん (岩波文庫)にんじん (岩波文庫)
不思議な本です。ひどい話なのですが、惨めでも湿っぽくもないのです。ユーモアさえあるのです。牧歌的な味わいもある。さらに、そのふてぶてしさ、逞しさのおかげで、にんじんに一方的に同情することもない。突き放した文章、感情を締め出して、こんなことがあった、こうした、こう言った、と・・・。何億の世界中の家族のなかのひとつにこんな家族もあったよ、と、ぽろりとこぼした一つ話のようだった。
読了日:11月20日 著者:ルナアル
影をなくした男 (岩波文庫)影をなくした男 (岩波文庫)
ドラえもんみたいな不思議なポケット。絨毯のように巻き取られる影。一足で七里進む七里靴。小ずるい悪魔の冷笑。美しい恋が花を添える。とても面白かった。「影」っていったいなんだろう。無くなってみて初めて知るのは、影そのものの大切さではなくて、影を実体よりも大切に考える人々の姿だった。思いもかけず。なんとも皮肉なものである。
読了日:11月18日 著者:シャミッソー
林芙美子 放浪記 (大人の本棚)林芙美子 放浪記 (大人の本棚)
めちゃくちゃでどん底。根なし草のような暮らしの中で、故郷(それは見たこともない理想郷のようなものだったのかもしれない)に寄せる思いが切ない。そして何よりも心を打ち、圧倒されるのは文学や詩への強い憧れ。暗闇を照らす光のようだった。
読了日:11月17日 著者:林 芙美子,森 まゆみ
月のしかえし月のしかえし
とても美しい絵本。これは本当に「しかえし」だったのか。ものすごく大きな贈り物を長い時間をかけて、与えられたように思う。厳しくて懐の深い月である。そして、音楽(芸術)がどんなに大きな力を持っているか、音楽に何ができるか、いや、音楽って、そもそもわたしたちにとって何なのでしょうねえ、としみじみしています。
読了日:11月16日 著者:ジョーン エイキン
ダーウィンと出会った夏ダーウィンと出会った夏
科学への漠然とした興味が、良き導き手を得たとき、一気に大きな喜びへと飛翔していくようで、少女のひたむきさにどきどきした。一方でそこにブレーキをかけ、引き戻そうとする母の気持ちもわかりたくないけどわかるのだ。私も愚かな母だから。ラストシーンは、まっ白い雪の世界。ただひとり、無垢な雪の世界にたつ主人公の姿に胸がいっぱいになる。あなたはまだ12歳。あなたの前には、誰も踏んだことのない真っ白い世界が無限に広がっている。あなたは一歩一歩、踏みしめていく。
読了日:11月16日 著者:ジャクリーン ケリー
わたしのなかの子ども (福音館の単行本)わたしのなかの子ども (福音館の単行本)
まるで昨日のことを話しているの?と尋ねたくなるほど鮮やかなウェッタシンハさんの子どものころ。豊かな自然、ゆったりとした暮らし、おおらかな大人たちの見守りの内に、「長い、終わりのない、美しい夢」を生きる子どもの姿が、懐かしくもあり、羨ましくもあり。「眠りに落ちる時、わたしの心は、ことばでいいあらわせない喜びにみたされました」と言えるような暮らし方。ウェッタシンハさんの「子ども」が、私のなかの子どもにも「目覚めよ目覚めよ」と呼びかけてくれているみたいだ。
読了日:11月14日 著者:シビル・ウェッタシンハ
メゾンテリエ 他3編 改版 (岩波文庫 赤 550-6)メゾンテリエ 他3編 改版 (岩波文庫 赤 550-6)
踊る踊る、華やかにくるくると物語もダンスしているよう。コロコロと笑い転げるように、踊るように軽く読み進めていく、かな、と思っていたら痛烈な皮肉。メゾン テリエのめんめんは娼婦である。なのに、不思議な清らかさ、純粋さを感じて、むしろ、そうではない周りの人たちのほうが下劣で滑稽に思えた。
読了日:11月12日 著者:モーパッサン
オン・ザ・ライン (SUPER! YA)オン・ザ・ライン (SUPER! YA)
(再読)クライマックスで大きく盛り上がったあとに、すでに扉を閉められた楽園の輝きを見せられたようで小さな小さな痛みを感じるラスト。でも、この痛みは心地よい。安心して「心地よい」と言えるほどに成長している彼らがまぶしいです。
読了日:11月12日 著者:朽木 祥
春を恨んだりはしない - 震災をめぐって考えたこと春を恨んだりはしない - 震災をめぐって考えたこと
静かな文章は祈りのようだった。人気のない町を描写する静かすぎる文章、匂いが、音の変わりに届けられたように感じました。いちいちゆっくり噛みしめたい言葉がいっぱい。そうして8カ月めの今日。「あの時に感じたことが本物である。風化した後の今の印象でものを考えてはならない」は著者の言葉。さらに、未来への展望に。私たちは変わっていく。池澤さんの思い描く未来は静かに心に沁みてくる。太宰治の女生徒の真似をしてわたしも言いたい「美しく生きたい」
読了日:11月10日 著者:池澤 夏樹
ロマンスロマンス
蝙蝠の話が、何度も出てきた。どっちつかず。主人公を取り巻いて相反する世界が、幾つ、何層、あっただろう。そして、その世界の相反する両側に属することを要求されながら、存在を否定されてもいて。蝙蝠をやめることはできるのか、断ち切ることはできるのか。ああ、そうだったのか、は苦い、あまりに苦いです。選んで蝙蝠になったわけじゃないのに。昭和8年、悲しい華やぎの帝都東京。
読了日:11月09日 著者:柳 広司
まろ、ん?―大掴源氏物語まろ、ん?―大掴源氏物語
源氏物語54帖を、一帖につき見開き2ページの漫画であらわし、一冊にまとめている。ちょっと大掴みすぎませんか?と思ったのですが、ここまですっきりさせると、全体像が見事に俯瞰できるものなのですね。プレイボーイの女性遍歴の集大成、というのは源氏物語のほんのわずかな一面。平安の貴族社会を生きる大ぜいの人々の人間模様、その人生の盛衰、苦悩、この世の無常までも描き上げた確かにこれは大河物語だった。源氏物語(現代語訳)、ちゃんと読んでみたい。栗じゃないのを^^
読了日:11月07日 著者:小泉 吉宏
海人―THE LAST WHALE HUNTERS海人―THE LAST WHALE HUNTERS
『鯨人』を読んでいるうちに写真が見たくて見たくて、この写真集を借りてきました。文章と写真とを交互に見比べながら読みました。写真と文章と、どちらがより雄弁に訴えているのだろう、と考えながら。生きるために命をかけて闘う、その相手への敬意と凄みが人と鯨双方から伝わってくる。神聖でさえある・・・
読了日:11月06日 著者:石川 梵
鯨人 (集英社新書)鯨人 (集英社新書)
銛一本で鯨を仕留める伝統捕鯨の村で、鯨を待って七年。素晴らしい記録でした。著者の出会う人々の顔が思い浮かんでくる。精悍で忍耐強い人の顔が。そしてどの顔も懐かしいような気がしてくる。この村の捕鯨を日本の捕鯨と比べてみたり、この村の文化が、西欧的価値観のもと、ごり押しの援助、近代化に、かき乱されて変わっていくことなど、それもまた人ごととは思えなかった。
読了日:11月06日 著者:石川 梵
ソーラー (新潮クレスト・ブックス)ソーラー (新潮クレスト・ブックス)
嫌な主人公であった。だけど、なぜか彼に肩入れしている。自分のなかで眠っている嫌らしさが、彼の行動に共鳴するのかもしれない。でも、それだけじゃない。徹底的に利己的な彼のなかに、不思議なピュアさを感じないだろうか? 矛盾するけど、ここまで徹底すると、むしろ不思議な誠実さを感じてしまうこともなくはない。最後には取り返しのつかない後悔のような、甘酸っぱさがこみ上げて来て、辛い。辛いと感じられてよかった。辛い、と思う甲斐のある終わりかただった。
読了日:11月05日 著者:イアン マキューアン
ヘリオット先生奮戦記 下    ハヤカワ文庫 NF 77ヘリオット先生奮戦記 下  ハヤカワ文庫 NF 77
ヨークシャーの田舎の風景は素晴らしく、その自然描写を味わいながら、ヘリオット先生が思いだす学生時代の恩師の言葉を、読者もまた神妙に味わいます。「諸君が獣医になる覚悟なら言っとくが、絶対に金持ちにはなれないぞ、しかしだな、無限の興味と変化に富んだ生活が待ち受けている」
読了日:11月02日 著者:ジェームズ・ヘリオット
ヘリオット先生奮戦記 上   ハヤカワ文庫 NF 76ヘリオット先生奮戦記 上 ハヤカワ文庫 NF 76
患畜は犬に始まり、牛馬羊。獣医って、大変な仕事。体力勝負で不屈の精神力が必要な・・・しかも年中無休のガテン系職業だったんだ。しかも患畜の後ろに控えた(?)人間たちの厄介なこと。厄介で・・・素朴に温かい。くすくす笑いの連続、ときどき噴き出しながら、楽しみました。
読了日:11月01日 著者:ジェームズ・ヘリオット

2011年11月の読書メーターまとめ詳細
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