二つの祖国 第4巻 山崎豊子 新潮文庫 |
パソコンのご機嫌が良いうちに、取り急いで、読後の気持ちを書いておこうと思います。
もしかしたら、あとから追記するかもしれません。
読み終えて呆然としています。
生涯二つの祖国の間で、翻弄され続け、悩み苦しみ抜いた彼。
この本のあと、彼の周りの何が変わるのだろう。彼の周りのだれが、彼の何をわかるだろう。
生涯二つの祖国の間で苦しみながら、二つの国の間の橋になろうとした賢治。
ただひたすらに誠実に生きようとした結果がこれだとしたら、あまりに辛すぎます。
忠誠心! この後に及んで、なお、忠誠心を問うのですか!
この後におよんでなお、二つの祖国は彼に背を向けていた。
背を向けながら忠誠心だけを要求し、どこまでも喰らいつくしながら、
決して彼の存在を受け入れようとはしなかったのでした。
そして、そんな国に、彼もとうとう背を向けたのかも知れません。
違う結末だったらよかったのに、と思いました。
やがて、彼には(作中の島木の言葉を借りれば)ペンを執ってもらいたかった。
このあとの世界を、このあとの日米間のさまざまなことを・・・
戦中ではない、軍属ではない、一市民として、書いてもらいたかった。
読後のこの無力感、怒り、悔しさ。
このような思いで終わる物語は、フィクションでありながら、フィクションとは限らない、と思うから、
なおのこと辛い。
辛いけど、たぶん、このような形で寸断されたものを受け継ぐのは、後の人間たちなのだろう。