壜の中の手記

壜の中の手記 (角川文庫)壜の中の手記
ジェラルド・カーシュ
西崎憲 他 訳
角川文庫


世界は広いな大きいな。どこかでこんな不気味なことが当たり前に起こっていたりして。
そして、おいで〜おいで〜と呼んでいるかもしれない。
怪奇な感じは、レイ・ブラッドベリにも似ているかも。


一番怖い!と思ったのは『骨のない人間』
これは生理的にイヤっ。もう理屈ではない怖さがある。
ああいうものがいて、ああいう生態があって、ああやって群れて・・・と思うともうぞわぞわっとしてしまう。


『死こそわが同志』も怖いです。何が怖いって、壊れた人間が。
そして、壊れた人間と壊れていない人間の境界ってどこにあるの?と思うと、ぞおっとしてしまうのです。


『時計収集家の王』はからくり蝋人形の話。
これもかなり皮肉な話なのですが、ミルハウザーなんか思い出したりしながら、わくわくしました。
からくり人形という存在が、いいんですよね。


どれも最後にはまさか!と驚いてしまうのですが、特におもしろかったのは、『ねじくれた骨』と『壜の中の手記』です。
このブラックな笑い。ことに『ねじれた骨』の所長のユーモアは、こわいよ。


『壜の中の手記』、アンブローズ・ピアスが失踪したのは、ほんとうのことなんですね。
神父さんとの会話が素敵でした。
ジャングルの危険を語る神父さんと都会の危険で答えるピアスの会話の辛口の可笑しさにおもわずにやり。
ラストはびっくりでしたが、内緒ですけど、宮沢賢治のほうが好きです。^^


好きなのは『黄金の河』です。
これも種子の中身など不気味だし、皮肉だし、わりとブラックなんだけど、不思議な味わいがある物語でした。
二度と会えなかった、というのもいいです。


どれも怪奇で皮肉な物語なのですが、御伽噺のような雰囲気があるのです。
大人の御伽噺かもしれません。どの話も、どこか遠い国(?)の、突拍子もない物語だからかもしれません。
どれも聞き語りというスタイルのせいかもしれません。
むかしむかしあるところに・・・で始まる物語のようにわくわくするのです。
おもしろかったです。