エマ (上) エマ (下) ジェイン・オースティン 中野康司 訳 ちくま文庫 |
初ジェイン・オースティンでした。
19世紀初めころのイギリスの上・中流家庭の暮らし、田舎の社交など、興味深かったです。
主人公エマの「かんちがい」ぶりは、もし身近にこんな女性がいたら、すっごい迷惑、と思うのですが、
彼女に振り回される人たちも善良というよりも、どこかおめでたくて(?)、おかしいのです。
まるで新春かくし芸大会を見物しているような本でした。
プライド高くて、うぬぼれや。鼻持ちならない勘違い女のはずのエマは、嫌いになるよりも、みていて楽しい。
突き放して読んでいたはずなのに、途中から、だんだん彼女がかわいく思えてきて、終わりのほうでは、かなり好きになっていました。
根はやさしくて素直なのよね。憎めないじゃない。
登場人物たちは、極端なほどに個性豊か。その行動は、戯画のようで、喜劇をもりあげてくれます。
エマのおとうさんの心配性と悲観癖(?)、
ハリエットの徹底したエマ崇拝、
フランク・チャーチルの軽さ、
ベイツ夫人のとめどないおしゃべりの大洪水、
そして、何よりも強烈なエルトン夫人の登場により、主人公さえ霞んでしまいました。
そんななかで唯一謎なのが、ジェイン・フェアファクスで、あのとらえどころの無さったら。
何を考えているのかさっぱりわからず。
鼻につく階級意識は、この時代では、これがあたりまえだったのでしょうか。
物語がおもしろいだけに、ときどき異物のようにひっかかりました。労働者や農民は人間に見えないのかい?
また、イギリスの上流社会のお付き合いの窮屈な雰囲気なども、はじめて知ったことがありました。
かなり親しい間柄でも、婚約者同士でさえも、ファーストネームで呼び合うことはあまりないようです。
(職場の上下間でもファーストネームで呼び合うような文化は、アメリカのものなのですかね。)
互いに訪問しあう暗黙のルールなども結構面倒くさそうで、一抜けた、といいたくなる。
結末の見事なまとめかたは、すっきりと満足。
やっぱりそうだったのね、というカップルたちの誕生もある一方で、主人公がこういうことになるとは思っていませんでした。
あとから思えば、なるほどで、予想がつかないほうが可笑しいですよね。わたしは、かなり鈍いです^^
読者を思う存分に楽しませようという作者のサービス精神たっぷりの楽しいお話。
軽やかに、よい気持ちで読み終えました。楽しかった。