山本容子の姫君たち

山本容子の姫君たち himegimi@heian (100周年書き下ろし)山本容子の姫君たち himegimi@heian (100周年書き下ろし)
山本容子
講談社


源氏物語』『竹取物語』『とりかえばや物語』『更級日記』『堤中納言日記』・・・平安時代のお姫様たちの日々を山本容子さんが描きます。
そして、お姫様たちに寄せる思いのエッセイと。


山本容子さんの愛する『不思議の国のアリス』の物語のなかから連れ出したアリスを伴走者としながら、平安時代を旅したそうですが、
この本のなかのお姫様たちは、たぶん、幼い日の山本容子さんの姿なのではないか、と想像しました。


唇が厚くて、ハナペチャのお姫様はちっとも美人じゃありません。(ごめんなさい)
でも、瞳は、どんなおもしろいことも見逃さない、というふうにきらきらしているし、太い眉は、我をまげない意志の強さを感じさせます。


土臭くて、パワフルで、興味をもったことにはわれを忘れて夢中になり、
きっと周囲の人々を「なんてはしたないことを」とあわてさせたに違いないのです。
でも、高貴の生まれは隠せないもの。にじみ出るような香気とりんとした気品に、突然気がついて、はっとさせられたりもするのです。


そして、何よりも、ほんとにほんとに愛くるしいのです。
ずっとずっと見ていても飽きない。
山本容子さんの描く少女たちはほんとに素敵。


それにしても、平安時代の文学なんて、高校の古典の時間以来、とんとご無沙汰で、この本の姫君たちの大半はまったく知らないのです。
ああ、読みたい。
ことに気になるのが、更級日記
藤原孝標の女(むすめ)が母や姉の語る源氏物語に夢中になり、「物語もとめて見せよ、見せよ」とねだるところ、
わくわくと胸ときめかせて「はしるはしるわづかに見つつ」と表現するところなど、山本容子さんのエッセイのなかで読みながら、
きゅんとなってしまいます。
遠い平安の女性が、俄かに自分に近しい人に思えてきます。
物語好き同志です、気持ちわかるよと。
原典はかなり敷居が高そうなので、わたしでも挑戦できそうなものを探すとします。


それからおまけですが、着物の質感、色や模様がたまりません。
焚きこめた香の匂いもしてきそうで、すてきでした。ページを繰るたびに、お姫様たちが着ている着物を楽しんでいました。