友情をこめて、ハンナより ミンディ・ウォーショウ・スコルスキー 唐沢則幸 訳 くもん出版 ★★★★★ |
唯一無二の親友が引っ越してしまった。ハンナは、何通も手紙を書きますが、一向に返事はなくて。それで、学校の「文通希望者」の箱から名前を引いた男の子に手紙を書きますが、返事はたった二行! 手紙好きな子にとって、ぴったりのペンフレンドをさがすのは大変です。そこで今度はルーズベルト大統領に手紙を書きました。「ペンフレンドをさがすのを手伝ってください」って・・・
親友のアギー、ペンフレンドのエドワード、おばあちゃん、ルーズベルト大統領、その秘書のミッシー、ペギーおばさんや学校の先生・・・
ハンナのたくさんの手紙とその返信だけで綴られた本です。
このたくさんの手紙のなかから、ハンナのいきいきとした文章力、そして、毎日のようすが手に取るように伝わってきます。
文通相手のおばあちゃんのやさしさ。けんかばかりしている両親のあたたかさ、誠実さなど。友達関係も。いろいろなご近所さんたちも。
それから、思いがけずもらう手紙のうれしさも、必ず届く手紙の待ち遠しさも、いつまでもこない返事を待つやるせなさも・・・
一番心に残るのはエドワードとの文通でした。最初二行だった手紙(しかもどう考えても相手は誤解するだろう、の二行!)が、どんどん長くなり、おもしろくなってきます。一度もあったことのないエドワードの素直で優しい人柄がにじみ出てきます。
手紙が上手になることでエドワードの気持ちも、まわりの状況も変っていくようすが、とってもうれしい。ハンナとの友情が深まっていくようすもとってもうれしいのです。
・・・どんどん変っていくエドワードの手紙を読みながら、実は、シャロン・クリーチ作「あの犬がすき」のどんどん変っていく少年の詩を思い出していました。でも、この本「友情をこめて、ハンナより」のほうが先なのですよね。
それから思いがけないびっくりうれしい手紙たち。手紙を書くことにより、手紙を受け取ることにより(または受け取れないことにより)、ハンナ自身も、いろいろなことを考え、いろいろな人と交わり、少しずつ成長していきます。
ハンナの心の瑞々しさ、素直さが溢れる手紙は、確かに受け取る人を微笑ませずにいられません。
なかなか友達のできにくい場所に住んでいるハンナが、手紙を書くことにより、沢山の人たちと心のこもった友情をかわし、友情が深まり、しかも友達がどんどん増えていくこともすてきなことでした。
>世の中には、ふしぎなことがたくさんあります。毎日、びっくりすることばっかりです!手紙を書かなくなりました。今書いた手紙があと何日で相手に届くはず、そろそろ届いたころだな、もう読んでくれたかな、返事を書いてくれるかな・・・と、手紙を書いたあとまでも、その一通の手紙のおかげで続くわくわくは、メールでは得られません。