夜、空をとぶ

夜、空をとぶ (詩人が贈る絵本)夜、空をとぶ
ランダル・ジャレル
モーリス・センダック 絵
長田弘 訳
みすず書房
★★★


デイヴィッド少年は、昼間はすっかり忘れているけれど、夜になると空をとぶ。
夜更けに目を覚まし、仰向けに宙に浮かび、足先で方向を選びながら、浮遊していく。
家の中を漂い、両親や犬の夢をのぞき、それから外へ出ていく。
夜には、月の光に包まれて、昼間見えていたものたちが色を変えて、すっかり違う景色になってしまう。
夜の暗がりで、昼より鮮明に見えるもの(昼とは違う見え方で)があるのだなあ、と思う。


雪原のようになって眠る羊たち。一方、いきいきと動き回る小さな動物たちも見える。
夜、眠りにつくものたちもあれば、目覚めるものたちもある。
デイヴィッドがとべることを思い出すことも、夜に目覚めるもののひとつなのだろう。
夜の世界は、活発に動いている印象だ。


デイヴィッドはとぶ。とぶ、というよりも、夢のように漂う感じだ。
途中、子フクロウのための魚を咥えた母フクロウに出会い、ともにとぶ。
母フクロウの語る物語が幻想的だ。


静かで美しい文章をゆっくり読みながら、大きなものにくるまれる幸福をしみじみと味わっている(あるいはくるんであげる幸福を)
「詩人が贈る絵本」シリーズの一冊であるこの本。詩人の言葉は、美しい。
添えられたセンダックの幻想的な絵が、この物語(詩)の雰囲気を盛り上げる。