高く孤独な道を行け(ニール・ケアリー3)

高く孤独な道を行け (創元推理文庫)高く孤独な道を行け(ニール・ケアリー?)
ドン・ウィンズロウ
東江一紀
創元推理文庫
★★★


中国で3年間も隠遁生活(?)を送っていたニールのもとにグレアムが仕事を持って迎えに来た。
時代は・・・
  >「・・・大統領が誰なのかも知らないよ」
   「ロナルド・レーガンさ」
   「また、また、からかって・・・」
(そうそう、前作のときの大統領はジミー・カーターでした。)
ニューヨークの「バーガー・ジョイント」じゃ、肉汁の滴るレアのスイスバーガーをニューヨークタイムスにくるんで、アイスコーヒーといっしょに出してくれるし、
カリフォルニアの某ホテルでは熱いシャワーを浴びたあと二種類の新聞と朝食がルームサービスで運ばれてくる。
まだ携帯電話は全く普及していませんでしたが、ヒッピーの時代は過ぎて久しい。

こういう時代に、ネヴァダ州オースティンじゃ、山ライオンやコヨーテがうろつき、限りなく本式の西部劇が生きているのだからアメリカって本当に広い・・・
カウボーイが馬を駆って拳銃ぶっ放し、ならず者がバンダナの覆面と目深にかぶったカウボーイハットで現金輸送車を襲ったり。
しかも、この本式の西部劇の陰に潜むのは白人至上主義のカルト教団。・・・そこにまたまた潜入工作だよ・・・
だからぁ、言ったじゃないの、最初のほうで、そういう怖そうな施設のことをさりげなく描写してくれるな、って。第三トーチカとかいう施設について。怖がりは、なんとなくいやぁな予感がするんですよ。「いずれ彼はここに?」・・・それがまたアタリだったりして・・・
好きな人はきっと楽しいはず。ごちそうたっぷり。スリル満点。
だけど。わたしは。・・・怖かったよ。ほんとに。
一巻目が一番おもしろかった。巻を追うごとに怖くなっていませんか?

ニールももう26歳か27歳、かな?・・・すっかり大人になってしまって。一皮向けたような雰囲気に戸惑ってしまいます。(それでもグレアムにはまだ「ぼうず」なんだね)
本質は変わらないんだよね。坊やを助けたい、という強い意志に引っ張られて、動いている。
そしてグレアムとニールの間に流れる変わらない深い情愛(見た目はあくまでもさっぱり)が、この作品の下に脈々と流れている感じ、そしていつもながら、それがニールに力を与えている感じが、いいです。

特に好きだったのは、
ミルズ家の居間の暖炉やテラスから見える風景。
「孤独の高み(ハイアンドロンリー)」の山小屋で一人読書するニールの至福の時間・・・
この幸せからべりべりとひきはがしてくれるのだから意地悪な作者です・・・

今回のお気に入りはエドレヴァイン
前二作でも、ただの意地悪な親父さんじゃないのはそれとなく匂わせてくれたけど、今回のかっこよさはどうでしょう^^
朋友会ニューヨーク支部オールキャストの大サービス、かな。

相変わらずのハッピーエンド・・・
前二作では、爽やかなラストシーンのわりによく考えてみれば、ニールってかわいそうなところにひとり放り出されて割りの合わない思いをしていますよね。
それに比べれば今回のラストの平和はニールには嬉しい。はず、なのですが、あのクライマックス以降、なんだかすっきりしないもやもやがわたしには残るのでした。もやもや。