ありがとうフォルカー先生

ありがとう、フォルカーせんせい (海外秀作絵本)

ありがとう、フォルカーせんせい (海外秀作絵本)


「ありがとう、フォルカーせんせい」の作者パトリシア・ポラッコは初めて出会う作家でした。

主人公トリシャはLDだった。
本が大好きなのに、その大好きな本が読めない。
トリシャが読めるようになるまでの果てしない道のり。彼女の苦しみ、そして努力はどんなだっただろう。
果てしない、絶望的にさえ見える道のりを歩くこと。
その道が何処にあるかさえ知らない、歩き方も知らない、そんな彼女に、
その道を教え、その道の果てにある素晴らしいものを指し示し、そこを歩くように導いた素晴らしい助け手の存在。
フォルカー先生。

フォルカー先生のような先生に出会えたことは幸せ。
この世にたくさんのフォルカー先生が存在することを祈らないではいられない。
と、同時に、トリシャに間接的に力を与えた存在、おじいちゃんとおばあちゃんのことを思う。
わたしは何の資格もない普通の大人である。
普通の大人にできることは子どもにとってトリシャのおじいちゃんおばあちゃんのようになることではないだろうか。
つまり無条件に子どもを受け入れるということ。
トリシャはLDだった。
だけど、特別な障碍があろうとなかろうと子どもたちは(大人たちも)さまざまなでこぼこを持っているはずだ。
飛びぬけたところ、へこんでいるところも。
それをそのままに受け入れてひたすらに愛すること、その子が自分にとってかけがえのない存在だと伝え続けること。それだけ…

 >「おばあちゃん、わたしって みんなと ちがう?」
   「もちろんだよ。
   みんなと ちがうってことは、いちばんすてきなことじゃないか。
   ほら、ほたるの むれを みてこらん。 ひとつ ひとつ ちがうだろ?」

最後に、主人公トリシャ――作者のパトリシア・ポラッコは、30年経た後に、フォルカー先生と再会する。

  >「どんなしごとを しているの?」
    「しんじられますか? こどもの本を かいているんですよ。・・・

涙があふれてきた。