『4TEEN』  石田衣良

短篇連作集ですが、4人の14歳を意味するタイトルがいいです。
中学2年生。女の子やセックスに対する好奇心旺盛な少年達の日々。
文章の透明感、月島という舞台の独特な空気、よかったです。それだから、こんな徹底した現代の御伽話も違和感なく受け止められるのかな、と思いました。

一話一話がかなり重たいテーマなのですが、少年たちは、わりとさらりと折り合いをつけていくのです。(特に「14歳の情事」は、おーい、かっこよすぎるぞ)
というと、軽いのかな、と思うのですが、そうじゃない、実は、結構引きずってたりして・・・
重たいけど、そして一話一話のしこりはずっと残るわけだけど、その重みやしこりを抱えたままで、読後にさわやかな風を受けたように感じさせてくれるところなど、好きです。一見綺麗にまとまっているように見えるけど、各々口に出さないけれど、ことの重さをしっかり胸のなかに引きずり続ける。それを互いに知りながら黙ってそのまま一緒にいる、みたいな感じ。こういう受け止め方もありなんだ、って思った。

「月の草」なんて好きです。リアルか、といえば、やっぱりこれはおとぎ話なんだろうなあ、まれに見る美しさではないでしょうか。アンバランスな14歳のぎこちないプラトニックな感情が美しい。むしろ御伽話であってほしい。御伽話の奥から聞こえてくるのは「それだったら生きていける」という声。そっと耳を傾けたい。

それから、「ぼくたちがセックスについて話すこと」も、↑と同じ気持ちで好きです。 「だってカズヤが誰を好きになるかなんて、考えたらどうでもいいことだからね」なんて、まあ、気障だこと。この突き放した物言いは優しいなあ、とおもってしまう。
最後にカズヤがいっぱいチョコレートもらうのもいいな。

大人に守られなければ暮らしていけないが、それがとても窮屈。自由になりたい、お金もほしいし、女の子ともどうにかしたいし、背伸びしつつも、もやもやしている。そんな14歳たちだった。「だけど、生きていくことはそんなに悪いことじゃないよ、そうだろ?」という作者の声が作品の底にずっと流れ続けているような気がして、好感を持ちました。

(でも、最後の「十五歳への旅」は、いらない。「こういう時代があったことをいつまでも忘れないようにしよう」なんて、現役の少年が急に老けてしまった感じ)