『島暮らしの記録』 トーベ・ヤンソン 

友人たちの助力を得てフィンランド岩礁の小島クレーヴハル(万力島)に小屋を建てる。
静かな、ヤンソンとトゥティ(友人)、ハム(母)の暮らし。

   日用品を積んだボートでときどき来る友人。
御馴染みの鳥達。けんかもするが、来なければ物足りない。
魚を獲ったり、腐らせたり。
濡れた雑誌をかわかせば風で島中に散って地面にへばりつく。
荒々しい海の波、風。その自然の厳しさ、すさまじさを描写しながらも、同時に自然の美しさ温かさも感じている。自然と真に交感している感じがいい。
かすかに感じる亡き父への思慕。
「孤独」を喜び、その生活を人一倍深く味わう、ヤンソンの島暮らし。

感情を交えない、ヤンソン的(?)記録文。
なのに、どうやら、すべてが真実というわけではないらしい。
時、場所、情景にフィクションを交えながら、ノンフィクションよりずっとリアルに生活を映し出している感じがするのがいい。

挟み込まれたトゥーリッキ・ピエティラ(トゥーティ)の淡彩スケッチが赴きを添える。できればカラーで見たかった。
また、扉見返しのクレーヴハルの素敵な絵地図はヤンソン母シグネ(ハム)によるもの。(彼女は挿絵画家だった)。拡大カラーコピーして額に入れて飾りたい♪