『ガンバとカワウソの冒険』   斉藤惇夫

様々な冒険のあと、次の旅までゆっくりしようと久々に我が家へ戻ったガンバのところに仲間たちが訪ねてきます。
四の島へ渡ったきり戻らないナギサ(シジンの恋人)をさがしに、ふたたび旅に出るガンバたち。
そこで、絶滅したはずの二匹のカワウソに出会います。
ガンバたちは、カワウソを執拗に追いかける野犬たちと戦いながら、伝説の川「豊かな流れ」を目指します。そこには、カワウソの仲間が生き残っているかもしれないのです。

それぞれ際立った個性を持つネズミたちのチームワーク。
脇をかためる鴎のキマグレ、途中出会う地元のネズミたちの活躍が魅力的でした。
次々に移りかわる場面、危険、出会い、とても面白く読めました。
そして、前二作に負けないラストシーンの盛り上げ方や余韻の持たせ方も、よかったです。

しかし、長すぎます。長すぎるわりに、十六匹のネズミたちの持ち味が「冒険者たち」ほどに発揮されていないのが残念です。
野犬たちが執拗にカワウソを狩る理由もなんとなく漠然としていて、ガンバたちの冒険の意味も目的も、言葉で語られると、妙にこじつけっぽく聞こえて・・・ 途中で出てきたエンコウ。何故この伝説の生き物がここで出てきたんだろう。 エンコウ(実際に姿を見せたわけではないが)の登場によって、それまで生き生きとしていた「実在する生身のカワウソ」が、「伝説の神秘的な生き物」めいた印象に変わってしまったようにわたしには思われました。 これは別の物語でゆっくりと語られるものだったのではないか、と思いました。
つまり、なんというか、伝説の不思議な生き物がいるのかいないのか、ということと、絶滅を危惧されるカワウソがいるのかいないのか、ということを一緒に並べられてもなあ、というふうに思ってしまいました。

先に読み終わった子が、カモク(カワウソの子ども)のラストシーンでの姿に感動していました。
(三部作で、一番好きなのは「グリックの冒険」だそうです。)

斉藤惇夫さんの本がこの三冊しかないのは残念です。
書くことをやめた理由は、斉藤氏のエッセイか何かで読んだ覚えがあります。
書くことよりも編集者という立場に専念することによって、たくさんのすぐれた本がこの世に送り出されたのでしょう。読者としてはとてもうれしいことです。
でも、このまま斉藤惇夫さんが子どもの本を書き続けていたら、その後、どんな本が生まれたのだろうかと思うと、純粋にもったいないなあと思うのです。
天から二物を与えられた人はまったく・・・。