- 作者: 津原泰水
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2012/12/12
- メディア: 文庫
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彩子、キリエ、麻耶、祀島くんの四人の高校生たちとその周りの人たちのテンポのよい会話が楽しかった『ルピナス探偵団の当惑』(感想)の続編、ということで手にとったこの本。
冒頭、はっと息を呑む。
最初は、何の話かわからなかった。何かの間違い? ひっかけられているの? ・・・そんなのひどいじゃないか。ここから始めるなんて。
冒頭の「まさか」が、タイトルの「憂愁」という単語に替わって、重たい雨雲のように四つの物語全体を覆っているのだ。
雨雲のむこうで起こっていることは血なまぐさい殺人であったり、事件をめぐるやりきれないような事情であったり。
だけど、そういう陰惨なものを眺めているはずなのに、ちらちらと踊るような明るい光が目に入って仕方がない。
・・・そこに彼らがいた。少なくても彼らがみんないた。
二冊のルピナスを読んだ。
一冊目で、初めて殺人事件に出会ったし、怖い思いもしたよね。
だけど、あのころ。四人一緒の高校時代はなんて素敵に輝いていたのだろう。
二冊目で、四人は大人になったのだ。
それぞれ、ばらばらに。それぞれの人生を生きていた。
もう絶対戻ることのできないあの日がどんなにかけがえがなかったのかを知るための続編だっただろうか。
そして、かけがえのない日々の扉を静かに閉めるための、閉めてそれぞれの道を歩きだすための儀式のような続編だったのだ、と知った。
それでもそれでも。
このまま別れていくのは寂しいから、いつかまたその消息を知らせてね。
彼らが元気でやっていることを、たまには会って相変わらずの会話が続いていることを、知ることができたらうれしいな。