山びこ学校

山びこ学校 (岩波文庫)

山びこ学校 (岩波文庫)


1948年。山形県の山間、山元中学校の二年生が、無着成恭先生のもとで綴った詩・作文集。


ろくに学校に行く時間もなかったのだ。家で本を読むことにも文章を書くことにも、家族には嫌な顔をされた(そんな暇があったら仕事をしてほしかった)

どこの家も貧しく、食べていくのもやっと。やるべき仕事は朝から晩まで寝ずに働いてもこなしきれないほどあった。
子どもたちは、みんな働いていた。
そういう子たちが綴った文章がこれなのだ。こんなにしっかりした文章、こんなにしっかりした観察眼、考え方。
飾りもなにもなく、ただあるがままに綴った文章の、清々しい美しさ。


最後に掲げられたのは、卒業式の答辞である。ここまで読んで、ふいに涙がこぼれた。涙なんて、ほんとは失礼だ、と思った。恥ずかしかった。
でも、わかってほしい。この涙は、決して決して同情なんかじゃないよ。
力いっぱい生きる彼らの心の強靭さと柔軟さに、感動しないではいられなかったのだ。
これほどの貧しさと辛さに途方に暮れる彼らの内から、あふれてくる健康で力強い、明るい光が、まぶしくてたまらなかったのだ。
その光を引き出し、いっそう輝かした無着先生という教師のかけがえのなさにも、ただ、頭が下がるばかりだった。