百花譜百選

新編 百花譜百選 (岩波文庫)

新編 百花譜百選 (岩波文庫)


スケッチと呼んでしまってはもったいないような端正な植物の画集です。
このたくさんの絵は、どういう理由で描かれたのかなあ。
研究のためなのだろうか、ただ楽しみのためのようにも思えるのだけれど。
季節の植物を写し取ることで日々の記録にしようとしたのかなあ。
植物の絵が日記になっている。
そこに添えられた短い文章とともに。


大学で、研究所で、近くの野で、庭先で、採取した、季節の花々、雑草なども。
それから、だれかにもらった豪華な花のなども時々混ざって。
絵は見えるままに忠実に、
文章は起こった出来事に忠実に、
どちらも、感情をあらわしたり、装飾をほどこしたりしないところが、
毅然としているようでもあり、潔くもあり、すっきりと清々しい。


最後のほうは病床なのだ。
あいかわらず感情を表す言葉はないのだけれど、
最後の絵は、お見舞いにもらったユリの花。
活けられているふうではなくて、無造作に(?)寝かせておいた花を描いている。
寝かせられた花の花弁は、床の形に合わせて、少し歪んでいる。
病気療養の苦しさを耐えているにちがいない作者の姿が重なってみえる。