1月の読書

2013年1月の読書メーター
読んだ本の数:14冊
読んだページ数:3746ページ

モーツァルトはおことわりモーツァルトはおことわり感想
無垢な芸術に、別の思惑をかぶせようとすることが、どんなに野蛮で、汚い仕事であるか、思い知らされます。芸術は抵抗しないし、迎合もしない。ただ変わらない。変わらないから尊い。在るがままの姿で、一番暗いときにも、一番美しいものを密かに準備しているのかもしれません。
読了日:1月28日 著者:マイケル・モーパーゴ
空が青いから白をえらんだのです ―奈良少年刑務所詩集― (新潮文庫)空が青いから白をえらんだのです ―奈良少年刑務所詩集― (新潮文庫)感想
罪を犯した少年たち。良き導き手がいたら、ここにいることはなかったかもしれない。彼らの中には、鬼ではなくて、ピュアな子どもも住んでいる。その子が元気で、うんとうんと大きくなってほしい。読み終えて、思ったことは「素晴らしい詩をありがとう」ということなのだもの。
読了日:1月26日 著者:
ピランデッロ短編集 カオス・シチリア物語 (エクス・リブリス・クラシックス)ピランデッロ短編集 カオス・シチリア物語 (エクス・リブリス・クラシックス)感想
牧歌的な風景、のどかな語り口。だけど、実はやりきれない日常がそこにある。プロローグの、首に鈴をつけられたカラスが、続く14の短編の主人公たちのように思えて印象に残る。鈴の音は、真っ青なシチリア島の空をバックに、やっぱり美しい、と感じました。
読了日:1月23日 著者:ルイジ ピランデッロ
ジョン万次郎 海を渡ったサムライ魂ジョン万次郎 海を渡ったサムライ魂感想
「地図は招待状のようです」という言葉が心に残る。万次郎の勇気や憧れ、一途な向上心、努力も魅力的だけれど、囚われない自由な心の養父母、友人たちの存在に心打たれる。人種差別の時代に、こういう人たちもいたのだ、ということに舌を巻く。アメリカの懐の深さに感銘する。
読了日:1月21日 著者:マーギー・プロイス
解錠師〔ハヤカワ・ミステリ1854〕 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)解錠師〔ハヤカワ・ミステリ1854〕 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)感想
静まり返った世界で、思わず息を詰め、錠の開くわずかな手ごたえを全身で聴きとろうとしていました。彼を解放する鍵を見つけてやりたい(それができるのは一人)と切に望みながら、彼の手際の優美さや魅力的な仲間たちのチームワークの巧みさなど、もっともっと見ていたかった。
読了日:1月20日 著者:スティーヴ・ハミルトン
エストニア紀行: ――森の苔・庭の木漏れ日・海の葦エストニア紀行: ――森の苔・庭の木漏れ日・海の葦感想
梨木香歩さんは森を内包した渡り鳥。この本を読んでいる私も、いつの間にか梨木香歩さんの目で地上を俯瞰している。この気持ちの良さのなかで、森の苔や、樹の間から射す日光、海の匂いまで吸いこんで、私の中に、ふつふつと豊かな有機的エネルギーが満ちてくるのを感じています。
読了日:1月18日 著者:梨木 香歩
チボー家の人々 (6) (白水Uブックス (43))チボー家の人々 (6) (白水Uブックス (43))感想
登場人物の心理描写はシニカルなくらいに丁寧だ。ことに死の床のチボー氏の描写の諧謔味はいたたまれない。ジャックの現在の姿に、むかし灰色のノートで語った彼の夢を思い出す。心に浮かぶ思いを整理できないままに不器用に語る彼の言葉、懐かしいジャックは変わっていない。
読了日:1月17日 著者:ロジェ・マルタン・デュ・ガール
ふたつの月の物語ふたつの月の物語感想
全てが終わったここから始まる。私には見える。あの子たちがこれから見つけ出すものが。その過程も、その後も、様々なシーンが様々な形で、手に取るように見える。どのシーンを思い浮かべても、ときめかずにいられない。そして、その場にいられない自分をちょっと悔しいと思う。
読了日:1月16日 著者:富安 陽子
タイガーズ・ワイフ (新潮クレスト・ブックス)タイガーズ・ワイフ (新潮クレスト・ブックス)感想
虎が、作者にとっての祖国のように思えてならない。幼い日に後にした祖国。二度と戻らない祖国。紛争の絶えない祖国。危険で、とても美しい、懐かしい祖国。鎮魂の物語であった。ナタリアの愛する祖父と、祖国と、消えていった物語のなかのあの人たちへの。
読了日:1月13日 著者:テア オブレヒト
冬の灯台が語るとき (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)冬の灯台が語るとき (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)感想
舞台となった古い家に籠る気配は、生きた人と、死んだ人とのあいだにある共感のようなものを呼び起こす。それが、ブリザードに閉じこめられた暗い陰鬱な空気の中に、静けさとともに広がっていくのを感じます。ルーシー・ボストンの『グリーン・ノウの子どもたち』を思い出します。
読了日:1月11日 著者:ヨハン テオリン
イクバルと仲間たち―児童労働にたちむかった人々 (ノンフィクション・Books)イクバルと仲間たち―児童労働にたちむかった人々 (ノンフィクション・Books)感想
無関心でいたら、絶対知ることのできなかったいろいろなこと(たとえば、気がつかないまま児童労働を援護する側にまわっていたことなど)、なんてたくさんあるのか。子どもや若い活動家たちの真っ直ぐな行動力に驚く。私にも身近な処から、小さな一端を担うことはできるに違いない。
読了日:1月7日 著者:スーザン クークリン
問う者、答える者 下 (混沌の叫び2) (混沌の叫び 2)問う者、答える者 下 (混沌の叫び2) (混沌の叫び 2)感想
「彼らは本当に自由を望んでいるわけではない」という言葉に、自分の中にある脆さを見せられたようでぞっとする。敵は誰。信じられるのは誰。自分自身さえも信じられない。主人公たちが過酷な運命に翻弄され、変わっていく様を見ながら、息継ぎがしたくて何度も顔をあげた。
読了日:1月4日 著者:パトリック・ネス
問う者、答える者 上 (混沌の叫び2) (混沌の叫び 2)問う者、答える者 上 (混沌の叫び2) (混沌の叫び 2)感想
第一部で、とんでもない所に置き去りにされ半年待った。待ち焦がれたはすなのに、遅々としてページは捗らない。わかっていた。これが容赦のない物語だということは。でも第一部よりさらに追い詰められて苦しくてたまらない。だけど、読まずにはいられない。なんなんだ! 下巻へ。
読了日:1月2日 著者:パトリック・ネス
月の少年月の少年感想
両親を海で失った少年の暗い孤独な心が、静かで幻想的な世界に結晶したようでした。「死」を否定するのではなく、背中を向けるのでもなく、死の居場所を自分の中に持ち、そして生きていく。生きていってほしいと思います。少年が見上げる月が(月に映った影が)とても美しかった。
読了日:1月1日 著者:沢木 耕太郎,浅野 隆広

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