葬儀の日

葬儀の日 (河出文庫―BUNGEI Collection)葬儀の日
松浦理英子
河出文庫

初めて読んだ作家でした。19歳の時の作品だそうです。


葬式のときに泣くのが仕事の「泣き屋」の「私」。「笑い屋」の「彼女」。
「泣き屋」の「私」と「笑い屋」の「彼女」はともに、自分自身、裏表のようなものだろうか。
すくなくとも「分裂」ではない、という。
「私」と「彼女」という二つの「極地」。
互いに求めつつ、その周りを回りつつ、合体させることができない、それはなんだったのだろう。
苦しげに、合体できない二つの極地に思いをめぐらし、何かを探そうとしている。
探しつつ、身近に「私」と「彼女」がいて、知らずに補完(?)に近いことをしていることをある意味快く感じている。
それと同時に、こんなに身近であることに少し罪の意識を感じていもいるみたい。


それが、なんだったにしても、自分というものに、ここまで深く真剣にむかい合った日がわたしにあっただろうか。
うやむやに「いなくなった」ではなくて、
おぼろげに「合体したのかなあ」ではなくて、
こういう形で決着をつけなければならないほどの真剣さに、少し危ういような気持ち。そして畏れてもいます。


はっきり言ってわからないのです(笑)
わからないけれど、惹かれる本って、あるものです。
惹かれる、というより、なんだかすごく懐かしいような痛いような・・・そんな感じ、かな。


19歳でなければ書けなかったかもしれないし、同時に、19歳でこういう作品を書ける人は稀有ではないでしょうか・・・

(他二篇収録)