リスとはじめての雪

リスとはじめての雪リスとはじめての雪
セバスティアン・メッシェンモーザー
松永美穂 訳
コンセル


なんと美しい絵本だろう。
絵はもちろん、添えられた押さえた文章も、表紙から見開き→裏表紙まで、とってもよくて、大好きな絵本になりました。


冬を冬眠して過ごすリス、ハリネズミ、クマが、その冬、眠らずに初めての雪を待ちます。
眠らないでいいる工夫、見たことのない雪をさがす姿・・・そののほほんとしたユーモアにふふっと思わず笑ってしまいます。
雪を見たことのない子が一生懸命雪を待つ姿のおかしさは笑いながらも、温かい気持ちにさせてくれます。
一生懸命さを応援したくなります。
早く雪、降らないかなあ・・・


待ちに待った雪。見たことも触ったこともない雪がほんとうに降ってきたときの、三人の表情。
言葉もなくて、ただ見上げるその見開きの絵に、わたしも彼らと一緒に黙って見上げている気持ちになりました。
空から音もなく落ちてくる白くて冷たくて柔らかいものの、不思議。次から次へと・・・。
忘れていた驚きがよみがえってくる。
待ち焦がれていたものは、想像していたものよりずっとずっといいものでした。


先日、私の住んでいるところにも雪が降りました。
すぐに解けてしまう雪でしたが、初雪です。
この雪を初めて見る小さな子達、初めてさわり、初めて歩き、初めて味わって、初めて遊ぶ小さな子達がたくさんいたことでしょう。
はじめての場面のわが子の表情をわたしは覚えています。覚えていられることの幸せ。子どもたちはすっかり大きくなってしまったけれど。
だから、この三人の動物たちの、声もなく空を見あげるその表情に、わたしも息をつめてしまう。冷たさも忘れて、ただ見上げる。


そして、三人の寝顔が、とってもとってもいいのです。この満ち足りた寝顔が。
春になるまでおやすみ。外ではしんしんとただもう、雪が降っているから。