らいほうさんの場所

らいほうさんの場所らいほうさんの場所
東直子
文藝春秋
★★★


ある家族―三人姉弟の物語です。静かに、おだやかな狂気が、伝わってきて、何度もぞっとする。
ちらっと江國香織の「流しのしたの骨」を思い浮かべました。
江國香織の本のなかの流しのしたにあるはずの骨は、実際にあるわけではなくて、あくまでも、象徴ですが、こちらには、ずばりあります。
流しが。


それが「らいほうさんの場所」と呼ばれるところ。
美しい花が植えられ、清められた場所。そのしたに何があるか、うすうす感じさせはするものの、実際、この家族は、誰も知らない。
その場所に何かを埋めたか埋めなかったかした人も、その場所を「らいほうさんの場所」にした人も、知りません。
問題は、そこに何が埋まっているか、埋まっていないか、ではなくて、それがそこにある、ということ。
不気味に得たいの知れない怖ろしげな何かの秘密を匂わせつつ、それをすべて封印し、忘れ、
あえて、そこを清め、大切にし、心のよりどころのようにしてしまうこと。
それは、この家族の絆の象徴でした。


はじめは、このやさしげな長女の奇妙さが不気味で、おだやかに、しかし強硬に支配する彼女の存在感が怖ろしかったのですが、
やがて、三人とも実はお互いに依存しあっていることに気がついてきます。
この関係から抜けたい、と願う次女もまた、ここに収まり、なまぬるくからめとられていく不気味さ。
これが平和だろうか。これでいいのだろうか。
なんだか気持ち悪い。


これはホラーなのか。この気持ち悪さ、怖さは。
そして、読みながら、奇妙な既視感めいたものをぼんやりと感じ始めるのも嫌でした。
それなのに、読み始めたら止められなくて、あっという間に読み終えてしまった。この暮れに大掃除もしないで(笑)
「らいほうさんの場所」って、なんだろう。
もしかしたら、うちにも・・・あるんじゃ・・・? 
ああ、嫌だ・・・