シンジケート 穂村弘 沖積舎 ★★★★ |
1986年、角川短歌賞次席だった連作「シンジケート」を初めとする歌集。
歌人・穂村弘さんの、これが第一歌集だそうです
初めての穂村弘でした。
まるで、ぼそりとつぶやくような言葉、気取った物言いな何もない。・・・というより、いいのか、こんな言葉使って、とあせります。
ジャン・ジュネの文章をちらっと思い出します。
だけど、時に卑猥な言葉、下品でさえあるはずなのに、なんだかしみじみと切なくなってしまう。
特別なことではない。
普通に生活する誰もが、「あ、この気持ち、わかる・・・」と感じる、そこ。
隠したくなったり、ちらりとのぞきたくなったりするような弱みや、悲しみ・・・
でもささやかすぎて、あっというまに忘れてしまうようなその感情を結晶にしたような言葉たち。
それからささやかなきわめて庶民的な憧れも。
あまりに平凡で少し退屈な日々を愛しいなあ、と思わせてくれて、とてもくつろいだ気持ちになりました。
好きなのは、
夕闇の受話器受け(クレイドル)ふいに歯のごとし人差し指をしずかに置けばこんなのもある。サバンナの象のうんこよ聞いてくれだるいせつないこわいさみしい
若き海賊の心臓? 真緑にゆれるリキッドソープボトルは
「自転車のサドルを高く上げるのが夏をむかえる準備のすべて」
何ひとつ、何ひとつ学ばなかったおまえに遥かな象のシャワーを
俺にも考えがあるぞと冷蔵庫のドア開け放てば凍ったキムコ思わず噴出してしまうのですが、そのあと無償に泣きたくなったりします。「酔ってるの?あたしが誰かわかってる?」「ブーフーウーのウーじゃないかな」
ねむりながら笑うおまえの好物は天使のちんこみたいなマカロニ
桟橋で愛し合ってもかまわないがんこな汚れにザブがあるから