河童 他二篇

河童 他二篇 (岩波文庫)河童 他二篇
芥川龍之介
岩波文庫
★★★


「河童」
全然読めていないのですが・・・
ほんとは河童の国の社会も人間の国の社会もさほど違いはないような気がする。
コチラの世の中も悪いことばかりじゃない、そんなに悪い世界ではないよ。と思いたい。


「蜃気楼」
エッセイのような、私小説のような。とても小さな物語。ただ鵠沼の海岸に有名な蜃気楼を友人達といっしょに見に行く、と言うkだけの物語。
友人達とのなんということもない会話も、今目の前にいるはずのない人間がこちらにむかってきているように見えたり、鳥がふとさかさまになって飛んで行くさまなどの間に挟まると不思議な半透明の世界に連れて行かれるような気がする。
情景を写したあっさりとした(でもシュールな)水彩画のような作品。


「三つの窓」
大変短い物語ですが、三つの章に分かれています。舞台はどれも「一等戦闘艦××」
下士官の部下に対する目や思いなどの微妙な機微が描かれる。どれもほんの小さな物語。ああ、戦中のことであった、と忘れてしまうのか、あるいはのちのちまでもあとを引くのか、それさえもわからないけれど、人間くさい、そして青臭い。(それがいい)
どんな感情も交えず語られるそれらはどこか民話の一こまのようでもある。
最後の章にいたっては、戦艦が擬人化され、戦艦そのものが主人公である。人の小さな営みをもはや遠くから眺めているような。
芥川龍之介、死の一ヶ月前の作。