海潮音―上田敏訳詩集

海潮音―上田敏訳詩集 (新潮文庫)海潮音―上田敏訳詩集
上田敏
新潮文庫
★★★★


通して読んだのは初めてです。
研ぎ澄まされた日本語と外国詩の出会いは、華麗。豪華絢爛なイメージ。言葉の美しさ、リズム、響きに酔いました。

それでも、やはり、ブラウニングはいいな。
有名すぎるけど、「春の朝」好きなのですが、他5編ともみんなよい、気持ちがよい。


アルベエル・サマンもみんないい。
    >白銀(しろがね)の筺柳(はこやなぎ)、菩提樹や、棒(はん)の樹や・・・
    水の面(おも)に月の落葉よ・・・
で始まる「伴奏」の吐息のようなひそやかな美しさ。


エミイル・ヴェルハアレンの「時鐘(とけい)」、これが一番好きです。出だしはこうです。
    >館の闇の静かなる夜にもなれば訝(いぶか)しや、
     廊下のあなた、かたことゝ、桛杖(かせづえ)のおと、杖の音、
     「時」の階(はしご)のあがりおり、小股に刻む音なひは
                        これや時鐘(とけい)の忍足。


壮大で深遠な叙事詩より、ささやかな叙景詩が好きです。
しかし、教養のない悲しさ、意味がよくわからない詩もちらほら、いえ、たくさんあって、とても読みこなせていないのでした・・・