『シーラスの家づくり』   セシル・ボトカー 

シーラス・シリーズ 第四巻。

三巻で、町の豪商の屋敷に住み、「遠山の金さんか」と思うような二重生活をしたりしたシーラスでしたが・・・
怒涛のような急展開・急展開の連続、の四巻であった。

シーラスが港で麻袋に入った赤ん坊を拾うところから話は始まる。
シーラスは家族を手に入れた。山と川舟を手に入れた。
手段が・・・びっくり。どうしたって「正義の味方」にはなれません。
シーラスのやることなすこと、どの一つを取り上げても「ブタ箱」に入るには充分すぎる罪状が並ぶにちがいない。
なのに、これ、やっぱり「正義」なのでした。すごい! この行動力はほんとに気持ちがいい。…特におばあさんを手に入れる(!)ところは、とにかく痛快で大好きです。

また、アレクサンドル・プランクの口にする「まともな人間」とビン・ゴーヂックの母ヨアンナの考える「まともな人間」との大きな違いなど、とても興味深いものがありました。
プランク一家の親切(?)が結局、狭い価値観のなかでの自己満足に過ぎなかったこと。シーラスの冷ややかな目を通して、またビン・ゴーヂックの一家の暮らしとの対比のなかでコミカルに描かれている。
終始黙っていたヤペトスは何を考えていたのだろう。あまり周りの人のことをつっこんで書かないので、こちらは想像するしかない。(あとになってわかってくることも多いのだけれど)・・・彼の居心地の悪そうな感じが、無言で同席する姿から伝わってくるような気がした。

俄仕立ての家族がこれからどう結ばれていくのかいかないのか、大いに気になります。 商人プランクとの溝。このさきこの関係はシーラスの行く手にどのようにからんでくるのか、これも気になるところ。

シーラス・シリーズ、今まで読んだどの巻をとっても、このシチュエーションで、あと5~6話物語ができそうだぞ、また、このさき、こんなふうに展開するのではないかというこちらの予想。
どれも、ものの見事にうらぎってあっという展開にもっていく。一冊ハードカバー200ページほどの本のなか、これでもかってくらいに見せ場を満載して、読後感はいつもすかっと爽やか。
ますますシーラスという少年が好きになっていきます。