『クワガタクワジ物語』 中島みち

すがすがしい読後感。
おかあさんがいい。あんなふうに、子どもに寄り添い、同じ目線で感動を分かち合える母親になりたい。

クワガタもカブトムシも昔は、みんなあんなふうにして飼っていたんだっけ。
それにしても、三年、すごい。
よそでは聞けないような虫たちの不思議なエピソードがいくつも写実的に描かれ、生命の不思議にドキドキする。
特に感動的だったのは、逃げ出したクワゾウ(コクワガタ)が、十日も経て戻ってきて、それまで飼われていた味噌樽にもぐりこもうとするところ。そして、翌日死んでしまうところ。
命の尊さ、そして、命あるものを手にした者の責任の重さを、ずっしりと、でも爽やかに描いていたと思う。

あとがきを読み、主人公の少年が、作者の息子であること、おかあさんが、作者自身であることを知りました。
これが実話であることを知った瞬間、物語にぱっと色がついたような気がしました。 (8.2.記)


★こどもの言葉
「わたしもよくカブトムシに名前つけてたよ。おかあさん、チカツンとかツノツノとか、覚えてる?
うちで飼ってたカブトムシはもっと利口だったよね。そんなにベチョベチョになんかしなかったよね」  (8.10.記)