ロブロィエクの娘

ロブロィエクの娘

ロブロィエクの娘

  • 作者: マウゴジャタムシェロヴィチ,Malgorzata Musierowicz,田村和子
  • 出版社/メーカー: 未知谷
  • 発売日: 2012/04
  • メディア: 単行本
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この物語は、イエジッツェ物語シリーズ十一番目(邦訳では六番目)の作品です。
ロブロイェクは、『嘘つき娘』アニェラの印刷高等学校時代の同級生とのことですが…情けないことにまったく思い出せない。
名まえやそれに伴うエピソードまで思い出せないものがたくさんある。
それでも、この物語は、そんな不義理な読者を見捨てることはなくて、
どの巻から読んでもいいんだよ、と、イエジッツェ地区の人々の扉は、温かく開かれているのが嬉しいです。


悩み、恋する若者だった嘗ての主人公たちは、どんどん大人になり、その子どもたちが活躍する時代になってきました。
だからといって、大人たち、物語の脇役に引っ込みっぱなしというわけではありません。
おやおや、いつのまにそういうことになったのだろう、と思う展開がいくつも。
シリーズどの物語でも、嬉しい結末にほっとしたものだけれど、その後も彼らの人生は続いていた。
決してハッピーエンドでおしまい、というわけではない。
下手すると、何もかもが間違いだったのではないか、と思うような事態も起こっています。
間違いだった?
いや、そんなことはない。
ぐるぐる悩み、突き抜けた、と思ったら、それが次なる悩みの入口にすぎなかったり。
でも、そのときどきで、起こったすばらしいこと、実った努力、などなど、それは、やっぱり意味があることなんだ、と振り返れる。
そう、この物語の人たちは、そんな生き方ができる人たちなのだ。


混乱の渦中のポーランド1996年。
働きたくても仕事のない人々が巷にあふれ、決して見とおしは明るくはありません。
大都市ポズナンの町の片隅、貧しくも心豊かな人々の確かな存在に、ほっとする。
何が大事で何が大事でないのか。
激しく変わって行く社会のなかで、変わらないもの、ゆるぎないもの。
流されやすいわたしには、彼らに教えられることはとても多い。
彼らの隣人の一人となってボレイコ家の扉をノックしたい。


ガブリシャをはじめとしたボレイコ家の人びとの存在感はもちろん、
イーダの息子へのお喋り(?)が絶品(!)で^^
登場しないのに独特の存在感を示すドムハヴィエツ先生、
主人公ベラが、チャレクやマテウシュとともに飛び回る夏の町、
バイト先の人びとの温かさなど、心に残ります。
また、ベラとその父ロブロイェクの互いを思いやる秘密や誤解がかわいいし、
何やら始まりそうな予感の二つの恋(?)も、この先の展開が気になる気になる。
ラストシーンの洒落ていること。
次の一行が読みたくて読みたくて。
ないけれど、あったらいいな、と次のページをさがしてしまう。
この続きの巻は、いつ読めるのでしょうか。
数年先なのかな。
楽しみは少しずつ。ゆっくり待ちたいと思います。