クロックワークスリー

クロックワークスリー マコーリー公園の秘密と三つの宝物

クロックワークスリー マコーリー公園の秘密と三つの宝物


19世紀のアメリカの都会の一角――


主人公は三人の少年少女。
三人とも、過酷で辛い日々を送っているどん底の子どもたちですが、
もっとも辛いのは、信じられる友だちがひとりもいないこと。頼れる大人がひとりもいないこと。
(いるということに、気がつかない・気づくことができない行き詰った状態)
最初はまるっきり接点のなかった三人の物語ですが、やがて、どんどん近づいてきて、三つの物語が一つになります。


これは宝探しの物語。
宝をさがすことが、自分自身(のなかの宝)を解き放つための大きな原動力、さらには彼らの未来を築くための礎になるのです。
最後まで別のものをさがしている三人が、互いに、力を借り、貸し、持てる力を合わせていくのが素敵でした。
そして、巨万の宝を手に入れる話より、未来への「希望」を手に入れる話のほうが、ずっと嬉しい。


怪しく暗く、その一方できらびやかな時代の雰囲気。
野生のままの忘れられた公園とどんどん発展していく繁華街。
どん底の暮らしをする人たちと大金持ちの暮らし。
心優しい人と冷たく残虐な人。
極端なくらいに真逆なものが共存する世界の、不思議なこと。
この町には秘密がとてもよく似合う。
どの街角にも、公園や墓地にも、建物のなかにも、秘密がたくさん。
そして意味深長で魅惑的な小道具たち。
海からやってきた緑の美しいヴァイオリン、精巧な作りの自動人形、怪しい船荷、あちこちに刻まれたヒイラギの模様・・・
隠されたいろいろなものが次々に目の前に現れて、めくるめくようです。


ぎっしりと詰まった面白さの要素がこんなに盛り沢山なのに、雑多な感じはありません。
お話の要素ひとつひとつが、複雑な自動人形の歯車のひとつひとつみたい。
すべての歯車がかみ合って回り出し、大きな物語が滑らかに動いていきます。
最後の最後まで、夢中で読みました。楽しみました。
気持ちよくおもしろかったーと、読み終えることのできる本です。


でも、これ・・・このまま終わりじゃないですよね?
何かもっともっと大きな謎がかくされていそう。
これから始まるにちがいない大きな冒険の匂いがぷんぷんするのです。
つづき、いつ、読めるのでしょうか。楽しみに待っていよう。