草色の切符を買って 岸田衿子 青土社 ★★★★ |
岸田衿子さんの山小屋は、上・信国境の六里ヶ原にあります。
おもにこの山小屋を中心にして、草花や、風景、人々、また旅行や少女時代のあれこれなど、ささやかな思い出が風のように、ささやくように語られます。
一つ一つの文章は短く、どのページにも古谷一穂さんの花の絵が添えられていて、とても愛らしいエッセイ集です。
遠い過去からチェックのワンピースを着た少女が駆けてきそう。
野生のブルーベリーをみつけたときのほくそ笑み。
部屋の中ですっかりドライになってしまった枯れた草木から聞こえる山の声。
林の中の散策。
第一「草色の切符を買って」というタイトルがいいではありませんか。
無心に、森や草原の声を行間から聞く。
読むというより、眺めるように、一行一行を楽しみたい本でした。