『ハリスおばさん国会へ行く』  ポール・ギャリコ 

ハリスおばさんが国会議員選挙に立候補する!
…実は、中央党の大物政治家ウィルモット卿の陰謀でした。
お人よしのハリスおばさんを押し立てて、中央党から立候補させ、下町の票をばらつかせることにより、他優勢党の票を奪うことが目的でした。
そのため、おばさんを立候補させても当選はさせない、という悪巧みができあがっていたのです。
何も知らないハリスおばさんは、「あんたもわたしも楽しく生きなきゃ」をスローガンに、国会で演説をぶち新しい法律を作ることを夢見ます。
悪巧みを知った、ハリスおばさんの例の「お友だち」が大集合。こっそりと作戦をたてます。そして、プロの政治家たちの鼻をあかして、ハリスおばさんを見事当選させてしまいます。

ここまでがすごくおもしろいです。わくわくしてくる。プロの政治運動屋たちが何も出来ず、何も知らずにいる間に、あれよあれよとハリスおばさんの名が高まっていくのは、胸が空くようです。
「はいはい、『あなたも私も楽しく生きなきゃ』わたしも一票~!」って気分になってくる。

ところが、問題はそのあと。お祭り騒ぎはあっという間に終わります。 ハリスおばさんは国会を知りませんでした。下院の政治家たちを知りませんでした。自分がどうしたらいいのか知りませんでした。
痛烈な皮肉がたっぷりの後半。

   なんとかしなくちゃという気持ちになっちまいまして・・・
   わたくしなんそとちがって、
   どなたかもっと頭のおあんなさるかたがおいでなさるはずで、
     その人のお席を、
   わたくしなんぞが占領しておりますわけにはまいりませんです。
かわいそうなおばさん。なんだか弱弱しいラストでした。
ただ、ハリスおばさんをめぐる人々の友情はゆるぎなく温かいのが、幸せでした。