『 駆けぬけて、テッサ』  K.M.ペイトン 

「駆け抜けてテッサ」というタイトルだからじゃないけれど、物語を読むというよりも、一気に駆け抜けたような気持ちでした。とてもおもしろかったです。

物語は平たく言えば、両親の離婚、残酷な義父のせいで心を閉ざしてしまった少女テッサが、自分の半身のように思える競走馬ピエロと出会い、触れ合いさまざまな曲折を繰り返しながら、癒され、成長していく物語です。

このテッサと競争馬ピエロとの関係がとてもいきいきと描かれていて、共感できました。深い愛情と、馬主をはさんだ厩務員という立場のジレンマなど…
厩舎の日常、競馬の事情など、リアルで、馬たちの鼓動が聞こえてくるようでした。乗馬の国イギリスでは、「競馬」というもののイメージも日本のそれとはずいぶん違うように思いました。

テッサ。まっすぐで激しい女の子です。誰もが諦めること、無理だということを、夢見て、頑固に突き進み、結局その夢をかなえてしまう。
それは、彼女の育った過程のあまりの過酷さ、そのための孤独、これと同じものをパートナーとしての馬のなかにもみつけたこと、そして、夢を共有する同士として馬を(そして自分を)信頼できたからでしょう。
激しさだけではなく、馬との友情、馬と一体になった信頼感、ともに仕事する人たちへの信頼と感謝、などなど、時間をかけて学んでいくようすがドラマティックで、素晴らしかったです。

ラストの章は競馬を知らなくても、その臨場感、スピード感、そして、馬と騎手との一体感をわが事のように体験させてもらいました。
このラストに向かう後半は特にテッサの心の動きがとても丁寧に描かれていて、最終章の感動に向かって一気に読んでしまいました。