『ダ・ヴィンチ・コード (上下)』  ダン・ブラウン

おもしろかったです。
上下巻約650ページ、まったく退屈するいとまがありませんでした。
暗号解読→暗号解読→暗号解読…
そしてあっちからこっちから追われ、さんざんハラハラさせられた末にすれすれでかわすの連続。
しかも黒幕はだれか全然わからないし、次々驚かされるし。

そして、なんとも興味深かった「聖杯」に関する薀蓄。教会が隠蔽し、抹殺しようとしてきた秘密、ある秘密結社(なんと実在するらしい)が守ろうと努めていたもの。
次々出てくる世界史上の著名人たちや著名団体の秘密。
一体どこまでが真実で、どこまでがうそっぱちなのか、さっぱりわかりませんでした。

モナ・リザ」の絵の不整合。
「最後の晩餐」の謎。
これらは、聞いたことがあります。遠い昔、高校の美術の時間、名画のスライドを観ながら、先生が話してくれたのを一気に思い出しました。
「なぜダ・ヴィンチがこういう描き方をしたのかは、いろいろな憶測を呼び、過去ずーっと物議を醸してきた」と聞いています。
だから、ここに、こういう解釈を与えることもありなんだ、なんとつじつまがあうことよ、と興味深いことでした。

それだけに、にわかに信じられないようなことがらも、「まゆつばだろう」と言い切れない。「あるいはそんなことが…」と思ってしまうのでした。
そして、エピローグの最後のページに至るまで、驚かされ続けだったのです。
後になって思えば、気のつく人であれば、途中でピンときたかもしれない、さまざまなサインをお間抜けなわたしはまったく気がつかず、作者にいいように翻弄されてしまいました。
宗教学資料館のパメラ・ゲダムという女性の言葉を思い出します。
正真正銘ドン・キホーテですわ、あのかたは」
エピローグを読み終えた瞬間この言葉をふと思い出し、もしや、わたしもドン・キホーテになっていた?と思ったのでした。

しかし、いきなり殺人から始まったのに、この爽やかでしみじみと満ち足りた読後感。素敵な物語の収め方でした。