『はなはなみんみ物語』  わたりむつこ

「はなはなみんみ」という響きはわらべ歌っぽくて、のどかなイメージがある。表紙はウサギと小人の子どもたちが遊んで(?)いる絵で、かわいいお話かな、と思っていたのですが、全然違っていました。
小人戦争で、絶滅した小人の生き残りの家族が、自分たちの仲間を捜しに旅立つ。
艱難辛苦の後に、別の小人の家族にめぐり合うまでの冒険物語、でした。

  小人の魔法「空中飛び」の呪文「トベリーノ トベリーノ ドンドン」が好き。
文章は、やさしくて、わかりやすい。ほのぼのとした感じがします。
ここに入ってくる戦争の話が妙にリアルで、御伽話然とした冒険物語から浮いてしまっているように感じます。
作者自身が戦争の悲惨な体験を持ち、言いたいことはここにある。だから、構えて、きりりとまじめに、伝えよう伝えようとする意図がはっきりしているのですが。

戦争の思い出の中、
小人の爆弾「いかり玉」をつくるために、真っ赤な「いかり草」を植える場面。
芋や豆のかわりに、この赤い燃える草の種を植えながら歌う歌が、凄いです。
  >空は きらきら青いのに
   緑の畑は 赤くなる
   川は きらきら青いのに
   緑の山は 赤くなる赤くなる

結構深いテーマが並んでいます。
小人たちは自分たちの作った兵器のために滅びました。でも、彼らが作った兵器は滅びないのです。後の世に引き継がれてしまっているのが怖ろしいです。
また、戦争のない平和な時代に、別の脅威がおしよせて、それぞれが、人のことなど無関心、自分さえ良ければ、という空気が蔓延していくようすなど。

白ひげじいさんは、戦争中、空中小人隊員として参戦して、唯一生き残ります。この空中小人隊が、太平洋戦争での特攻隊と重なります。
さて、この白ひげじいさんを、この物語の最後にきて、なぜ殺す必要があったのですか。
その死に方は、そのまま特攻隊でした。
白ひげじいさんは、「ひとり生き残ってしまった」という言葉を何度もつぶやきますが、だからこそ、二度と戦争を起こさないための語り部でいなければならないことも自覚しています。

すらすら読めます。ひきこまれます。おもしろいです。
でも、わたしにはこれ、納得できないです。別の解決策があったはずです。
未来に希望を託す、といいながら、これはないよ、と思わずにいられませんでした。