『もみじのてがみ』 きくちちき

 

もみじのてがみ

もみじのてがみ

 

 

「てがみだよ
 てがみだよ」
つぐみがあかいもみじの葉っぱをくわえて向こうの山からとんできた。
うけとったのは、おおきなどんぐりを抱えて食べているねずみで、葉っぱを口にくわえて、あかいもみじをさがしにでかける。
途中で、りすやひよどりと合流する。
どの動物たちもけんめいに食べている真っ最中だった。秋たけなわ。お腹に詰め込む時期なのだろう。
出会いのさいの掛け合いも、素朴で、なんともいいのだ。
「やあ りす いたのか」……「ねずみ いってみるか」


水分をたっぷり含んだ筆が、さあっと走って描き出したような深い森は、静かなのにエネルギッシュで、隅々までが弾むようだ。森が動いている。生きている。


事情は細かに書いてはいないけれど、たぶん、こちらの森で赤いもみじの葉っぱを見つけたら、それが次の森にことづける手紙になるのだろう。
あかい葉っぱは、もうすぐ雪が降るよの知らせだから、それぞれに冬の準備をする目安になるのだ。
黒っぽい木々の間にちょこんと見える小さな赤い色が鮮やかで美しいのだけれど、あれはほんとにもみじかな。
あかいもみじの葉っぱはみつかるのかな。


今年の冬は厳しいだろうか。
小さな動物たちの「ゆきじたく」は大変だろうか。


言葉を失うほどの見事な紅葉が季節の移り変わりを知らせてくれるのだったら、これから迎えるのが厳しい寒さだとしても、やっぱり、ありがとう、といいたくなる。
来るべき冬に、よし!って思える。
まだまだ紅葉には早い我が家のまわりだけれど、木の葉の色が変わる時期が待ち遠しくなる。


表紙は葉っぱの紅葉色。
動物たちと、動物たちが見つけた森の赤いもの(や、赤くないもの)が並んで楽しい。