『キバラカと魔法の馬:アフリカのふしぎばなし』 さくまゆみこ(再話)

 

 

この本には、アフリカの10の国の言葉で語られた13の民話、ことに、魔法の話、精霊や魔神が出てくる話が集められている。


巨人は、おおらかに狩りをして、あとに山や川をこしらえていく。
またある巨人は、村をまるごとひとつ、まるのみにしてしまう。
出てくる動物と言えば、馬や猿など、それから、ぞう、きりん、らいおん、ひょう、はげわし、わになどが人ととともに活躍する。アフリカなのだ。
今まで聞いた(読んだ)ことのあるお話によく似た話も、いくつもあった。でも、やっぱりアフリカのお話だ、と思うのは、大道具・小道具の違いだろうか。
たとえば、日本のお話なら、羽衣だろうが、こちらでは、ワニの皮なのだ。
日本のお話のお札や玉手箱も、アフリカでは……と比べるのも楽しい。


「キバラカと魔法の馬」「魔法のぼうしとさいふと杖」のような、魔法と冒険の物語にわくわくした。
「悪魔をだましたふたご」のおどりの楽しさに、笑ってしまう。小さい時、双子に憧れたな。自分とそっくりの姉妹がいたら、どんないたずらをしよう、とか。
「ヘビのお嫁さん」は、蛇の息子を持った母親の嫁探しの話。異形といわれる子どもたち、生まれついた姿よりその心根を大切にする人にどうか出会えますように。


訳者による「あとがき」で、アフリカの物語は、夜に語られる、と書かれていた。
「夜の闇は、人間の想像力をとき放ち、昼間の太陽の下では見ることのできない世界へと、私たちを導いてくれます。」
夜は特別。とりわけアフリカの夜は特別。
訳者さくまゆみこさんは、1975年、ナイジェリアを夜行の貨物列車で旅したときのことを語っていて、その話が印象的だった。
「夜の風に吹かれながら屋根なしの貨車に乗っていると、まるで、無人の荒野を走っているような気がしたものです。……」
だから、この本は、夜寝る前にだけ、少しずつ読む。
十三夜、わたしの枕元で、お話を語ってくれた。アフリカの草原や森、山の上の風を運んできてくれた。