『星をつなぐ手 ――桜風堂ものがたり――』 村山早紀

 

星をつなぐ手 桜風堂ものがたり

星をつなぐ手 桜風堂ものがたり

 

 

先に読んだ『桜風堂ものがたり』の続編である。
月原一整は、山間の小さな町の小さな書店、桜風堂の後継者になったものの、これまで勤めていた街なかの大きな書店とはいろいろと勝手が違う。
まずは、期待していた作家の、頼みの新刊が入ってこない。
覚悟していたとはいえ、地方の小さな書店が生き残っていくことの厳しさにいきなり直面する。


小さな書店が次々に閉店に追い込まれる現状である。
リアル書店でなくても本ならネットで簡単に買える。それなのに、なぜ町の小さな本屋さんが必要なのだろうか。
ある登場人物が、こんなふうに語っている。
「子どもがひとりで歩いて行ける場所か、自転車で行ける程度の場所に本屋さんがあってほしいの。買えさえすればいいっていうのとは違うの。ネットだと、そのときほしい本だけを買うことになるでしょう? そうじゃなくて、買う予定のなかった本と、子どもが出会う場所が欲しいのよ」


この本のなかには、幾人もの本好きたちの、本屋との思い出が描かれている。
本屋の店主との会話が将来の夢につながったこと。足を踏み入れた本屋の床の感触、匂いのこと。毎日学校帰りに寄った本屋さんは夢の国だったこと。漫画雑誌の発売日にはお金を握り締めて買いに走ったこと。などなど。
わかる、わかる。その気持ちは私も知っている。かけがえのない本屋の思い出だ。
そうして、思った。もっともっとこういう話を聞かせてほしい。いろいろな人の本屋のかけがえのない思い出話を、もっともっとずーっと聞いていたい。


無性に本屋にいきたくなる。
それも大きな書店やチェーンの書店ではなくて、町の本屋さん。
だけど、見まわしてみれば、私の家の近所から、そういう本屋さんはとっくの昔に消えていたのだ。
「町の本屋さんはね、一度消えたらもう二度と復活しない。もう帰ってこないんだよ」
本の中に書かれている巷の声である。


この本は、本屋さんへの応援歌である、だけではなくて、買い手としての、本好きたち、本屋好きたちに、町の本屋さん、なくなったら困るよね、なくさないために何ができる?という問いかけでもあると思う。


桜風堂書店は元気だ。
いろいろなことがあったのだ。じっくりと味わいがいのあることが。それからよくよく考えてみたいことが。
そしてね。
町の本屋が元気になると、何が起こるか。
ここは、かつては、観光地として有名だった町だ。すっかり過疎の町となり、人々もそのことを受け入れてしまっている町。
その町が、今、息を吹き替えしつつある。
本屋に引っ張られるように、元気を取り戻しつつあるのだ。
何が起こったのか、この本のなかで?
いろいろなことがあったのだ。……(繰り返し)


桜風堂ものがたりは、これでおしまいだそうだ。続きはもう書かれないのだ。
でも、わたしはやっぱり続きを読みたい。あの人やこの人のこれからのことを知りたい。
桜風堂と、この町が、これからどうなっていくのか、知りたい。
いや……それは、ちゃんと見えるじゃないか?
続きの物語は、それぞれの読者の胸の内で、すでに語られ始めている、きっと。